【電通過労死、社長が謝罪】電通過労自殺事件から考える「労働災害」適用範囲拡大の歴史

法と犯罪と司法から、我が国のウラ側が見えてくる!! 治安悪化の嘘を喝破する希代の法社会学者が語る、警察・検察行政のウラにひそむ真の"意図"──。

電通過労死、社長が謝罪

2015年12月、電通の女性新入社員の自殺を受け、三田労働基準監督署は16年10月、最長月130時間の残業などが自殺の原因になったとし労災を認定した。さらに同年12月、東京労働局は、電通と女性社員の上司を労働基準法違反の疑いで東京地方検察庁に書類送検し、石井直社長が引責辞任。17年9月の初公判では、後任の山本敏博社長が罪状を認め謝罪した。


 2015年12月に広告最大手・電通の新入社員が過労自殺した事件で、17年9月、労働基準法違反罪に問われた法人としての同社の初公判が開かれ、出廷した山本敏博社長が「責任を痛感している」と謝罪しました。自殺という個人の意志にもとづく行為であっても、その原因が過重労働やパワハラなどにあったと認められれば、“犯罪”として会社の刑事責任などが問われ、被災者には国の整備した労働災害に関する法システムのもとに労災保険が給付される。現代社会ではそれがごく当たり前のこととして受け止められています。

 現在のわが国では、労働基準法により、事業主は労働者に対し労働災害発生時の補償責任を負っています。そして国の制度として、労働基準監督署が被災者や遺族からの労災申請を受け調査を行い、保険を給付します。またそれとは別に、事業者が被災者・遺族から民事上の損害賠償を請求されたり、刑法上の業務上過失致死傷罪などに問われたりすることもある。そのように過労死は、法的に労働災害のひとつと定義され、社会的に認知されているわけです。

 一方で、過労死問題がニュースとなるたびに、しばしばこんな声も聞かれます。なぜ死ぬ前に仕事を辞めなかったのか、本人の意思で続けた以上自己責任ではないか、と。事実、かつて労働災害といえば、勤務中の事故など、あくまで肉体的・直接的な被害を指すものであって、いわゆる過労死は含まれませんでした。つまり、会社が過労死の責任を追及され、国がケアするという現代の風景は、つい半世紀ほど前までは自明のものではなかったのです。では、労働災害なるものは、どんな経緯でその定義を過労死にまで拡大し、現在に至るのか? 今回はその変遷の歴史をひもといてみたいと思います。

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2024.11.21 UP DATE

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