――古くから今に至るまで米大統領選では、対立候補へのネガティブキャンペーンが行われてきたが、トランプは昨年の大統領選で、これまでの戦略の常識を覆したといわれている。また、大統領になった今でも中傷動画を公開中だ。彼の過激な動画戦略には、何か思惑があるのだろうか?
党公式のCMの場合は「I approve this message(私はこのCMを公認します)」と候補者の声が入る。
自分に否定的・批判的なメディアとの“戦争”に明け暮れるトランプ米大統領だが、中でも動画を利用した攻撃が話題だ。宿敵CNNを擬人化してボコボコにする動画を拡散したり、政権の功績を自画自賛する「リアルニュース」を配信し始めるなど、大国のリーダーとしては極めて異例である。
結果として米国内の世論はかつてないほど分断されているわけだが、それでもトランプが大統領になった事実は揺るがない。本稿では、米国における「動画を利用した選挙戦略」の歴史と、トランプ流の動画戦略を照らし合わせながら、彼の出現が選挙システムや有権者の心理にどのような影響を与えたかを考えていく。
テレビをつけると朝から晩まで罵倒の嵐
「日本から見れば不謹慎に見えるかもしれませんが、米国では昔から政治に限らず、食品や日用品などあらゆる分野で、競合相手に対するネガティブなCMが認められているんです。選挙シーズンになると誹謗中傷、レッテル貼りともいえるようなCMであふれ返りますよ」
こう話すのは、現地のテレビ事情に精通するデーブ・スペクター氏。トランプの動画戦略が過激なのは先に述べた通りだが、対抗勢力を貶める“ネガティブキャンペーン”は、米国では一般的だという。