――日本でも昨年、ヘイトスピーチ対策法が施行され、大阪市にもヘイトスピーチ抑止を目的とした条例が登場。さまざまな面で、ヘイトスピーチへの対策が進んでいる。海外では、ヘイト動画に自社の広告が自動表示されたとして、大手企業が広告の引き上げを断行。こうした動画は、果たして規制できるのだろうか?
『ヘイトスピーチ 表現の自由はどこまで認められるか』(明石書店)
今年3月、世界最大級の広告代理店が、YouTubeやグーグルの広告配信ネットワークから広告を引き上げた騒動が全世界で報じられた。
ことの発端となったのは、白人至上主義団体KKKの元代表・デイビッド・デューク氏や、同性愛者向けナイトクラブで49人が射殺された事件を称賛したスティーブン・アンダーソン牧師の動画。その動画に、英内務省などの政府機関やBBC、ガーディアンといったメディアの広告が掲載されていたのだ。
「英国のニュースメディアが3月17日に『極右勢力のヘイトスピーチ動画に、BBCの広告が表示されている』と報じました。BBCは英国の公共放送局ですが、その広告表示により、あたかも極右勢力を支持しているかのように捉えられる危険があったわけです」
そう話すのはジャーナリストのまつもとあつし氏。周知の通り、YouTubeやその所有企業のグーグルの広告配信ネットワーク(Google Display Network)に表示される広告は、独自のアルゴリズムで自動的に決定されている。そのため、グーグル側のあずかり知らぬところで、差別やヘイトを撒き散らす動画と、BBCなどの広告がマッチングしてしまったわけだ。英政府はこの件でグーグル側に「憎悪や偏見に満ちたコンテンツを野放しにしている」と書簡を送付。英国軍のリクルートや献血の呼びかけ等、すべての広告を取り下げる事態にも発展した。
「グーグルも一連の動きを重大視し、対応を行っています。同社のCBO(最高ブランド責任者)は3月20日に更新した公式ブログで、『問題あるコンテンツをGDNから排除する』『広告主による除外設定をよりやりやすくする』と発表しました」(まつもと氏)
このように、ヘイトスピーチをはじめとした過激な動画は、急激な成長を続けるウェブ業界でも悩みのタネとなっている。その問題を本稿では詳しく見ていこう。