――早回しで料理が出来上がっていく様子を俯瞰で撮影した「レシピ動画」――。SNSで流れてくると思わず見入ってしまうこの動画だが、マネタイズ方法や運営会社のことはあまり知られていない。このブームで本当に儲けているのは誰だ? 新たなトレンドになりつつある「レシピ動画」ビジネスの裏側に迫る。
世界中で人気のレシピ動画。ただ、海外の動画は「なんだか大味そう」という声も。
SNSを開くとタイムラインに流れてくる料理動画を見かけることが増えた。早送りで調理風景を映した動画を見れば、本日の献立が決まるというお手軽さと料理のシズル感は、料理をしない人でも、思わず目を奪われることがしばしばあるだろう。こういった、いわゆる「レシピ動画」は一種のブームと呼んでも差し支えないほど昨今では浸透しつつあり、空前の“レシピ動画バブル”が訪れている。
レシピ動画のきっかけはアメリカのBuzzFeedが運営するTASTYとされ、15年末頃からフェイスブックやインスタグラムといった、SNSを中心に配信。40秒~1分間という再生時間の短さも功を奏し世界中に拡散されていった。
「TASTYの言語も関係なく楽しめる動画は革新的で、瞬く間に一大コンテンツへと成長しました。その要因はYouTube、フェイスブック、インスタグラムなど、複数のソーシャル系プラットフォームを用いて動画を配信する、いわゆる分散型メディアだったからといわれています」(映像関係者)
その後、TASTYだけでなく同じくアメリカのTastemadeが市場参入し、国内でもデリッシュキッチン、クラシル、モグーといった新規メディアが乱立していった。また、クラシルやモグーのようにレシピ動画のみで成り立っているベンチャー企業もあれば、クロスメディアとして講談社は出版物のプロモーションの一環でSpooonn!を運営しているように、数多の企業がレシピ動画ブームに乗っかろうとし、16年8月には王者TASTYの日本版・TASTY JAPANも登場。本格的にレシピ動画ブームが到来することになる。
さらに、レシピ動画は基本的には無料というビジネスモデルにもかかわらずデリッシュキッチンを運営するエブリーは16年6月に6億6000万円、クラシルを運営するdelyは今年の3月に総額30億円も資金調達したということから、投資家たちの期待の高さが伺える。
ただ、果たしてレシピ動画は本当に“儲かる”ビジネスなのか?
百花繚乱レシピ動画も実は頭打ち?
レシピ動画といえば、前述した分散型メディアのイメージが強いが、実際のところはアプリのほうが収益を得る可能性が広がるという。現在、国内のレシピ動画メディアとしてフォロワー数が最も多く、アプリも800万ダウンロードを突破したデリッシュキッチンは、我々の取材に対してこう語る。