アクション映画としての矜持!常軌を逸した演者たち!そして「ヤンキー卒業問題」…『HiGH&LOW』新作の”ヤバさ”を語り尽くす!

――EXILE TRIBEが一堂に会したお祭り映画である『HiGH&LOW』に殴られ、非公式ブックまで制作してしまったサイゾーpremium編集部が、ハイロー新作映画にまた殴られた!

『HiGH&LOW THE MOVIE2 / END OF SKY』予告編より

 ということで、昨年の『HiGH&LOW THE MOVIE』の公開時に行った、ヤンキーマンガとEXILE史学に詳しいライターの藤谷千明さんと、アクション映画に明るい加藤よしきさんによる対談を今回も再び敢行。前回は「村を焼かれた窪田正孝」「国産の海外映画」「HIROさん版『エヴァンゲリオン』説」などのパワーワードが飛び出すアツいものとなったが、それから1年がたち、8月19日に公開された続編『HiGH&LOW THE MOVIE2 / END OF SKY』を2人はどう見たか? 「HiGH&LOW」の世界を語り尽くします。(なお、今回も同席している編集は重度のLDHオタです)
※本編には『HiGH&LOW THE MOVIE2 / END OF SKY』のネタバレが含まれますのでご了承ください。

【ポイント①】いきなりだけど、エンドロールがすごい!

藤谷 去年の対談の時点で「続編はあるだろう」と言ってはいましたが、まさか2、3を立て続けに公開するとは……(編注:『HiGH&LOW THE MOVIE3 / FINAL MISSION』は11月11日公開予定)

加藤 あの頃の俺たちはただ、適当なことをしゃべっていただけだった……。

藤谷 適当なことをしゃべるのは間違っている。でも、適当なことをしゃべりたいと思う気持ちは間違ってないですよ!

加藤 とにかく本論に入る前に、まずは「関係者の皆様、ごめんなさい」と言っておきたいです。昨年の対談を読み返すと、本当に適当なことを言っていて目も当てられないです。申し訳ない。 

使徒が襲来しそうなこの予告編。

編集部 とはいえ、昨年の対談を今読み返すとかなり的を射ているなと、手前味噌ながら感じます。前回、加藤さんが「ハイローはヤンキーの『エヴァンゲリオン』だ」と言っていましたが、最近公開された『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』の予告編は完全に『エヴァ風』の作りでした。偶然とはいえ、予言的中です。というわけで、今回も好き勝手に語っていきましょう! まずは新作について率直な感想をお伺いしたいです。

加藤 『HiGH&LOW THE MOVIE2 / END OF SKY』(以下、ザム2)は、まためちゃくちゃおもしろかったです。昨年の『HiGH&LOW THE MOVIE』(以下、ザム)と比較した時に、すごく洗練されていましたね。テンポよく切るべきところは切って、増えたキャラクターも個性が立っていて魅力的で、ますますハイロー世界が楽しくなったと思います。それにザムへの世間の反応を取り入れて「ここまでやっていいんだ」と作り手側も理解したのでしょうね。 “ターミネーター源治”(小林直己)や、あの圧巻のカーチェイスのように、前作のリアリティラインだったらおそらくできなかったであろうものが実現されていた。

 そして何より言っておきたいのが、ラストシーンからのエンドロール!

藤谷 あれは本当に素晴らしいですね。コブラ(岩田剛典)が九龍グループの善信(岸谷五朗)に前蹴りをかまして、SWORDが全員集合して、バーン!と「END OF SKY」のロゴが出て、「HIGHER GROUND」が流れるというタイミング、最高以外の言葉が見つからない

加藤 本当に、完璧なタイミングでした。スパッと終わるのが気持ちいい。いくら続編がある前提とは言え、あそこで映画を終わらせるって、今の邦画においてすごく勇気があると思いました。そして「終わったー!」と思ったらとんでもない映像が流れはじめて、「どうなってるんだよ!」ってなりました。直前に善信が「隠蔽できるんだよ……!」って力強く言っていたわりに、街が本当にめちゃくちゃになっていて、全然隠蔽していないところも込みでたまらなかったです。唯一の欠点は、横の映像がすごすぎて、スタッフロールに全然目が行かないことでしょうか。

藤谷 「エンドロールをきちんと観ずに帰ってしまう問題」っていわれるじゃないですか。ザム2のこれは絶対に席を立てないですよ。ザム3の、おそらく本編有数の大変な場面がバンバン流れてくる。普通の映画だったら多少は出し渋ったりするかもしれない。それが一切ない恐ろしさを感じました。

【ポイント②】歴史に残るカーアクション!車に飛び込む九十九さん!

藤谷 アクションに関しては、前作も十分にすごかったですが、さらに進化していました。一番すごかったのは、言うまでもなくカーアクション。中盤の源治VS雨宮兄弟(TAKAHIRO、登坂広臣)&琥珀さん(AKIRA)・九十九さん(青柳翔)でしょう。これは歴史に残るアクションシーンですよ!

加藤 日本映画で観たことのない映像でした。あの車の縦回転は、日本で初めてやったらしいですね。

藤谷 クリストファー・ノーランの『ダークナイト』【1】でもやってましたが、「キャノンロール」というそうですね。今回のザム2のキャノンロール、本当に志の高い回転ですよ。

加藤 USBを奪った敵の車に向かって九十九さんがダッシュしてからの、フロントガラスへの飛び込みもすごかった。最近の韓国映画では、車の中から擬似ワンカットのようにして撮影するアクションシーンがあるんですが、あれの応用且つそれ以上のインパクト、ケレン味がありました。あとは、琥珀さんと源治の殴り合い。あれはもう怪獣映画みたいでしたね。

藤谷 私はあのシーンで、『マトリックス1』【2】終盤のモーフィアスとエージェントのバトルを思い出しました。攻撃力も守備力もカンストしてる人同士の殴り合いというか。

加藤 琥珀さんが殴ったあと、源治がユラ〜ッと立ち上がりますよね。普通だったらそこで「えっ?」とひるみそうなものですけど、琥珀さんが躊躇なく戦いを続けるところが良い。2人のキャラが出ている。

藤谷 前作でのベストバウトは劉VSスモーキーで意見が一致しましたが、今回はどうですか?

加藤 格闘シーンでいうと、源治VS琥珀さんと、クライマックスのジェシー(NAOTO)VSコブラですね。ツイッターで拡散されているジェシーVSコブラのgif動画は、永遠に観ていられる。ジェシーのあの着地は一体どうなってるのか、今も理解できないです。ダンスではよくある動きなのかもしれませんが、戦っている最中にああいう形で入れてくるのは初めて観たので衝撃を受けました。それと、ジェシーがすごくて見逃しがちなんですが、あのシーン、コブラもコブラで一瞬壁を蹴って体勢を変えているんですよ。みんなサラッとすごいことをやっていますね。

加藤さんが永遠に見ていられるジェシーVSコブラのシーンは5:32から(「HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY」Action Special Trailerより)
新たなハイロースター誕生の予感…(岩永ジョーイHPより)

藤谷 話の本筋には深く関わっていないですけど、ヤマト(鈴木伸之)VSブラウン(岩永ジョーイ)も印象に残っています。アクションとしては“ガタイのいい人VS細身で身体能力の高いすばしっこい人”というバランスがすごくいい。しかもブラウンがナイフを使うじゃないですか。『クローズZERO』【3】しかり、ヤンキーものでナイフを使うのは “切羽詰まった卑怯な人”という記号になりがちなんですが、ブラウンはかっこいいナイフ使いという見せ方になっていた。それと、ブラウンが英語でしゃべってくるのに対して、ヤマトが持ち前のIQの低さで「は?」と「ダイジョブー?」で済ますのが秀逸でしたね。私の考える「ハイロー感」はあれなんですよ。ブラウン役の岩永ジョーイさん、たしか『クローズEXPLODE』【4】『TOKYO TRIBE』【5】にも出演していたと思うんですが、改めて調べたら元ジャニーズJr.で石原軍団という経歴の持ち主でした。ここで彼を投入してくるとは……。

加藤 RUDE BOYS新メンバーのユウ役だった佐野岳くんも、すごい動きをしてましたね。彼はぜひザム3では、幹部クラスとのタイマンシーンをやってほしいです。

藤谷 彼は『仮面ライダー鎧武』(テレビ朝日)【6】の頃から、生身ですごいアクションをしていたことが話題になっていました。メンディーもよく出てる『最強スポーツ男子頂上決戦』(TBS)でもその高い身体能力を発揮してます。去年の10月にツイッターで「それにしても、アクション映画でたいなーーー!」ってツイートしていて、ファンは「ハイローに出て!!」って言ってたんです。そしたら、本当に出た。LOVE、DREAM、HAPPINESSとはこのことですよ(?)。ザム2のオープニング、無名街の廃墟でのジャンプシーンで、満面の笑みの佐野岳くんがスクリーンに大写しになると私は毎回泣いてます。もう5回は泣きました。

加藤 ただ、ジェシーVSコブラが素晴らしいがゆえに、どうしても最後のロッキー(黒木啓司)VS蘭丸(中村蒼)がかすんでしまうんですよね……。2人とも、すごくいい動きはしているんですよ。でもほかが派手すぎるから……。単純に、2人とも動きやすい恰好をしていないから、そんなにアクロバティックなことはできないというのはありますが。

藤谷 ガラスで手を傷つけたりするような、、蘭丸が反則技を使うことで動きが鈍くならざるを得ない部分もありますしね。

加藤 でも、ロッキーがコブラのバンダナを拳に巻いて、怪我をしている手で蘭丸を殴るのは、印象に残る良いシーンになっていました。アレがあるから、なんだかんだで燃えましたね。

【ポイント③】演者はまず常軌を逸すべし――過剰であるほど輝く世界

藤谷 蘭丸については、もちろん中村蒼さんはこれまでにない役をすごく頑張っているんですけど、鑑賞後の印象として、新キャラの中ではジェシーに食われてしまっていたような。。ジェシーは良くも悪くもインパクトが強いし、フックになるキメ台詞も多い。「お仕事ですからねぇ。make money〜?♪」もアドリブだったという話がありますし、セリフのひとつひとつが“ヤバい”んですよ。

加藤 ジェシーと源治は、ハイローの世界を理解しきった上で演技のベクトルが定まっていると思うんですよ。「この世界ならこれくらいやっていい」っていうことを、よくわかっていた。普通の俳優だったら、「サン・キングス刑務所にいて、オレンジ色のツナギの囚人服を着て、懸垂しながら登場します」って言われたら困惑すると思うんですよね。でもそこで「そういうことね」と理解して、「じゃあこれくらいやっていいな」ってぱっとつかめる反射神経はすごいと思う。蘭丸は、普通の映画だったら十分ラスボス感はあると思うんです。ただ、いかんせんこれはハイローなので。一方、九龍グループの新キャラたちは、全員そこをしっかりつかんでいましたね。

ベテラン勢の迫力も圧巻。

藤谷 クライマックスの善信もそうだし、克也(加藤雅也)、植野(笹野高史)、源(高嶋政宏)、藤森(木下ほうか)、全員がハイローの世界観やベクトルをしっかり理解している感じがありましたね。やはり場数のなせる技でしょうか。特に木下ほうかさんの肩のすぼめ方が最高でした

加藤 高嶋さんの、あの窓ガラスのシーンも最高でした。あれくらいやっていい世界観だというのを、ベテラン俳優さんたちはつかんでいたんでしょうね。岸谷さんの「隠蔽できるんだよ……!」の言い方とか。

藤谷 村山役の山田裕貴さんは、ドラマ版から培ってきた経験と本人の反射神経が相変わらず働いてました。今回も「鬼邪高校、課外授業始めまーす」とか「だるまさんがころぶかな?」とか、抜群なアドリブをぶち込んでいたみたいですし。でも、このままハイローがシリーズ化したら、LDH外の若手の俳優がどんどん出ることになるでしょうが、大変ですよね。まず常軌を逸した芝居・キャラクターを自ら作っていかなければならない……。

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