殺人事件にまで発展した事例も……マルチや怪しい情報商材屋が参戦 急増する“仮想通貨詐欺”最前線

――「世界経済に大きな変革をもたらす」とされる仮想通貨。実際に経済市場において、その動きが始まっている一方、一部では仮想通貨をエサにした詐欺行為も増加している。「仮想通貨の詐欺」と聞くと、新しい犯罪のようにも聞こえるが、その手口は非常に古典的なものだという。情報商材ビジネスに手を染めた業者が参戦する、その実態とは?

『60分でわかる! 仮想通貨 ビットコイン&ブロックチェーン 最前線 (60分でわかる! IT知識)』(技術評論社)

 投資の世界で大きな話題を呼ぶ一方、2014年には東京のビットコイン交換所「マウントゴックス」で巨額のコイン消失事件も発生。プラスの面でもマイナスの面でも話題を呼んでいる仮想通貨だが、いまだメディアの報道は少ないものの、仮想通貨の絡んだ投資詐欺が増加しているという。

 そもそも仮想通貨とは、インターネット上で電子的に記録され、発行・取引されている通貨のこと。なお金融庁では4月に施行された改正資金決済法において、仮想通貨を以下の3つの性質を持つ財産的価値に定義し、その一例がビットコインであると紹介。なお現在は、ビットコイン以外にもイーサリアム、リップルなどをはじめ、複数の仮想通貨が日本でも流通している。

【1】不特定多数の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる。

【2】電子的に記録され、移転できる

【3】法定通貨又は法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない

 そして日本円などと相互に交換可能なため、外国為替相場のように交換レートが変化するのも特徴。そのレートが短期間で何倍、何十倍にも跳ね上がることがあるため、投資対象にもなっているわけだ。その性質に着目し、「今、この仮想通貨を買っておくと、価値が上がりますよ」と独自の仮想通貨を売りつけるも、それがいつまでも現金と換金できない……というのが、昨今増加中の詐欺(コイン詐欺)の実態だ。

 金融庁は、同法施行に合わせ、投資詐欺への注意喚起も記載した仮想通貨のパンフレットを発行。そこには、「聞き覚えのない業者から、電話で仮想通貨の購入を勧められた」「投資に関するセミナーで、『金融庁推薦』『ここでしか買えません』『必ず値上がりします』『購入時よりも高い値段で買い取ります』などの文句とともに、仮想通貨の購入を勧められた」といった相談が急増していることを記載。そのような事例は投資詐欺の可能性があると説明している。

 ビットコイン&ブロックチェーン研究所代表の大石哲之氏は、「その手の詐欺が増え始めたのは昨年1月から春先にかけて、過去にICO(Initial Coin Offering)したコインが大きく値を上げたことがきっかけだったはず」と話す。なおICOとは、仮想通貨におけるIPO=新規公開株のようなもの。独自の仮想通貨が売り出されるプロセスのことだ。

「特にイーサリアムという仮想通貨が猛烈な爆上げをしたので、『そういうコインを事前に買っておくと儲かる』という認識が広まり、その成功例を宣伝文句に詐欺コインを販売する業者が増えたのではないでしょうか。その頃は、オンラインカジノで使うあるコインが、ネット上であからさまに怪しい宣伝をしていて話題になっていました」(大石氏)

 では、改正資金決済法の施行によって、仮想通貨を利用した詐欺業者は減っていくことになるのだろうか?

「この法律の狙いは、仮想通貨を法定通貨に換えるマウントゴックスのような取引所の規制にあります。仮想通貨の交換を行う業者を登録制にし、自己の資産と利用者の財産の分別管理を義務付けることなどにより、先の巨額コイン損失事件の再発防止を目指しているわけです。一方でこの法律が施行された現在も、仮想通貨の発行は自由にできます」

 そう話すのはIT技術(Technology)を使った金融(Finance)の潮流を紹介する雑誌『日経FinTech』(日経BP社)編集長の原隆氏。つまり、同法は、詐欺コイン業者を直接ターゲットにしたものではないということだ。

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