【特別対談・文化人類学者×AV監督】AV史に残るドキュメンタリーの正しいミカタ 民族の最大タブーに挑む問題作?先住民と絡む『裸の大陸』の人類学

――『裸の大陸』なるAVシリーズをご存知だろうか? 本誌にも度々ご登場いただいたAV監督・長瀬ハワイ氏らが手がける名物AV企画である。ここでは、かねてからこのシリーズを興味深く観続けてきたという人類学者と長瀬監督の対談を敢行。そこで明かされたシリーズの真実とは?

企画の経緯から過酷なロケ、さらには近親相姦のタブー、グローバル化やスマホがもたらす性の開放など、話は多岐に渡る。(撮影/吉岡教雄)

 アフリカの奥地やアマゾン流域などの過酷な地域にAV女優が赴き、現地で原始的な生活をしている部族の男性とセックスをするという、ナチュラルハイが生み出した『裸の大陸』シリーズとDANDYからリリースされる『野性の王国』シリーズ。マイナス40度の極寒地域で絡んだり、アマゾンで世界最強といわれる媚薬を試したりする“命知らずのAVシリーズ”とされているが、実はこの作品、世界のさまざまな民族風習について調べる人類学者からも、驚きをもって注目されているという。同シリーズを手がける、ナチュラルハイ、DANDY両メーカーで監督を務めた長瀬ハワイ氏と、AVにも造詣が深く、ぶっかけAVに関する論文も書く異色の人類学者、馬場淳・和光大准教授が、人類の性行動から、グローバル化が進む現代におけるAVの存在意義にまで縦横無尽に語り合った──。

馬場 今回はいろいろ聞きたいことがあるのですが、まず『裸の大陸』『野性の王国』などのシリーズの着想は、どこから生まれてきたのでしょうか?

長瀬 一番シンプルに答えれば、自分がそういう世界中の秘境や辺境に行ってみたかったということですね。純粋に興味があったのに加え、AVではまだそういったところに行って撮るという作品がなかったので、やってみようと。

馬場 藤木TDC氏の著作『ニッポンAV最尖端』(文春文庫)には『裸の大陸』第1作目の経緯のほか「AVというジャンルは結構昔から海外を目指していた」という指摘があります。それはヨーロッパなどでブロンドのきれいな女性をスカウトするだとか、あるいは日本のAV女優に贅沢な海外旅行をさせてあげながらの高級ムードに溢れたAVだったようです。1980年代のことでしたが、90年代には通常は入国しないような国々にも行き始めた。ただ2000年代の『裸の大陸』や『野性の王国』は、AV女優が辺境の伝統的な社会に行って、現地の男性とセックスをする内容で、二重の意味で斬新でした。個人的には、そのようなAVに、アフリカなど独特の感性を持った現地人の性行動を記録する可能性や期待を抱いてしまいますが、どうでしょうか?

長瀬 そうですね。あとはセックスの場面だけではなくて、その場所にたどり着くまでの道中を、知見を深めながら仕込みなしで目的地へ向かうというスタイルなので、日常では考えられないようなことが起こる。実際、自分がAVの撮影に来ていることを、途中まで忘れてしまうくらいなんです。

馬場 長いものだと220分もあるうちの前半はロードムービー調で、「AV撮るの忘れてた」ってつぶやきまで収録されたりしてますよね。

長瀬 毎回、こんな命の危険を感じてまでなぜAVを撮らなければいけないのか、という自問自答から始まるんですよ。一種の開き直りというか、気持ちの切り替えがないと、なかなかその状況でセックスは撮れないですね。

 とはいえ、撮影はいつも過酷な環境の場所に行っているので、順応するまでには毎回時間がかかります。『世界のメガチ○ポSPECIAL アマゾンの奥地に存在する世界最強の媚薬を探し原住民と最高の生中出しセックスをヤる』で行ったアマゾンのとある国では、最後まで順応できてなかったと思います。

馬場 僕も人類学者として、パプアニューギニアで長くフィールドワークをしてきました。まさに『裸の大陸』と同じように、村の家にホームステイをするんですが、彼らの独特の感性とか、行動を支配する倫理観は、かなり長い時間を一緒に過ごさないと理解するのが難しい。長瀬監督は彼らの家に住み込んだりしたわけですが、一緒に暮らして、その感性や倫理に触れたという感触はありましたか?

長瀬 一番感じるのは、彼らは何千年も前から同じ生活をしてきたということ。僕らが村での生活になじめずへろへろになっているときでも、彼らは普通に生活し、根本的な強さがある。昔からの生活を続けているところに、カメラで切り込んでいかないとな、というのはいつも思っています。

馬場 「昔から変わらない生活」という点はあとで考えてみるとして、月並みですが、そういう過酷な環境でAVを撮影する苦労はなんでしょうか?

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