最古の春画の題材は皇室の大スキャンダル!江戸春画ブームの次はコレだ!?妖しき“平安エロ絵巻”の世界

――2015年、春画を主体とした日本初の展覧会「SHUNGA 春画展」が開催され、多くの観客が詰めかけたように、近年は春画が大ブームとなっている。そこで主に注目されているのは江戸時代の浮世絵のものだが、すでに平安時代には性愛を描いた絵巻があったという。それは、春画の新たなフロンティアなのか──。

「小柴垣草紙」(絵師不明、江戸後期摸写、国際日本文化研究センター所蔵)

 “春画”と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、江戸時代に木版画によって数多く制作された浮世絵の春画だろう。2013~14年にイギリスの大英博物館で開催された春画展でも展示の中心となり、その高い芸術性は世界中に広まった。

 しかし、実は日本の春画の歴史は、江戸時代よりもはるかに古い。最古の春画絵巻と伝えられているのは、「小柴垣草紙」である。後年に模写された写本が多く残されているが、残念ながら原本は残っていない。原本はおそらく平安末期から鎌倉初期に描かれたものとされている。

 物語は、986年(平安中期)に起きた実話をもとにしている。済子内親王が天皇の代わりに伊勢神宮に奉仕するため、京都・野々宮で潔斎(身を清めること)していたが、警護の武士である平致光を自ら誘惑して密通したことが露見し、伊勢行きが取りやめになったという皇室の大スキャンダルを題材に、男女が交わる様子が赤裸々に描かれている。

 その最も古い模写本で13世紀末のもの、『定本・浮世絵春画名品集成17 秘画絵巻 【小柴垣草紙】』(林美一、リチャード・レイン共同監修/河出書房新社)によれば、奥書に制作年が記された写本が複数伝わっており、はっきりわかっているのは1779年、1800年、1828年、1831年、1849年の作。江戸時代後期に多数の写本が作られ、古典的な作品として重視されていたという。

 では、誰が何を目的にこの絵巻を制作したのか? 国文学研究資料館の研究員・井黒佳穂子氏の論文「『小柴垣草紙』の変遷」(「浮世絵芸術」収録、2012年)によれば、写本には済子女王と致光の一夜の逢瀬から伊勢行きが取りやめになった結末で終わる短い〈短文系統〉と、その後、致光が済子女王のもとを再訪して再び結ばれたというフィクションが付け加えられ、性行為のありがたさを説く〈長文系統〉の2つの系統があるという。

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2024.11.22 UP DATE

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