【共謀罪法案衆院で可決】共謀罪に国民監視の意図はなし!? 警察・検察の皮肉なる“真の目的”

法と犯罪と司法から、我が国のウラ側が見えてくる!! 治安悪化の嘘を喝破する希代の法社会学者が語る、警察・検察行政のウラにひそむ真の"意図"──。

共謀罪法案衆院で可決

犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を改めた「テロ等準備罪」の新設を目的とする組織犯罪処罰法改正案。このいわゆる「共謀罪法案」が2017年5月19日の衆議院法務委員会で強行採決されたのに続き、5月23日の衆議院本会議で自民・公明・日本維新の会などの賛成多数で可決された。野党は「公権力による国民監視が強まる」などと強く反発している。


「捜査機関が常時国民の動静を監視するようになるといったご懸念はまったく無用のものであります」「この条約(国際組織犯罪防止条約)の締結に必要な国内法としてテロ等準備罪処罰法を成立させ、この条約を早期に締結することが不可欠です」「テロ組織を含む組織的犯罪集団による犯罪の実行着手前の段階での検挙、処罰が可能となり、こうした犯罪による重大な結果の発生を未然に防止することができるようになると考えております」

 犯罪を計画段階から処罰する、いわゆる「共謀罪」の趣旨を含み、監視社会につながるものとしてメディアを賑わせた組織犯罪処罰法改正案。安倍晋三首相は2017年4月6日の衆議院本会議でその意義と必要性をこう強調しました。

 しかし私の見るところ、東京オリンピックの開催を3年後に控え、国際社会と協調しつつテロや犯罪に備えるという説明は単なるエクスキューズであるに過ぎません。かといって、メディアで喧伝されているような、野党や一部識者による批判も正しいとは思えない。共謀罪の新設を切望している警察・検察の真の意図は、そうした批判とは現時点でまったく異なるものでありながらも、実は彼らの予期せぬところで反対派の危惧する通りの事態に陥る可能性を秘めている、というのが私の見立てです。今回はそのような、警察・検察の本音と反対派の批判の複雑なねじれ構造について解説しましょう。

 今回の法案は、昨今の国内外の不安定な情勢を踏まえて「テロ等準備罪」を新設するという建前になっていますが、メディアでいわれている通り、事実上、過去3回廃案になった共謀罪の“焼き直し”です。犯罪とは、実行されてはじめて処罰の対象になる、というのが従来のわが国の刑法の基本的な考え方でした。ところが共謀罪は、犯罪の計画や準備に参加するだけで、実行に移される前でも犯罪としての構成要件を満たしてしまう。反対派はその点を問題視し、「権力過多な監視社会の実現を企図するものだ」などと推進派を批判しています。

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2024.11.21 UP DATE

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