映画会社と出版社はグルだった!?ヒットしても作家に利益なし!?ハリウッド「原作改変」の横行理由

――ハリウッドでベストセラー小説が映画化されても、原作と中身が違うということはよくあり、その結果「原作者が映画の出来に激怒」というトラブルも耳にする。なぜ、このような事態は起きてしまうのか? ここでは映画化をめぐってのトラブルと、原作改変が許される理由を探っていこう。

そもそも女性向けSM官能小説が今、全世界でベストセラーというのが驚き。

 ベストセラーの小説やマンガがもれなく映画化されるのは日本もハリウッドも同じだ。しかし、業界の規模の違いもあって、ハリウッドで生み出される利益は日本のそれとは比べ物にならない。たとえば、邦画では人気マンガを実写化した『テルマエ・ロマエ』(2013年)の興行収入が約60億円であったのに対し、原作者のヤマザキマリ氏が受け取った「原作使用料」は100万円だったと明かされているが、一方のハリウッドにおいては、主婦が書いた女性向け官能小説こと“マミー・ポルノ”の名を広め、世界中で約1億2500万部以上も売り上げたという『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(15年)をめぐって、映画化の権利だけで500万ドル(5億円)ものカネが動いたという。また、契約金が100万ドル(それでも十分高い)だったにもかかわらず、シリーズ累計の興行成績が世界歴代2位の77億ドルを記録した『ハリー・ポッター』のように、映画が当たればさらに書籍も連動して世界中で売れるため、小説がハリウッドで映画化されヒットすれば、その儲け額は日本と比べ物にならない。

 ただ、利権が巨大であるほど、かかわる人間も多くなっていくのが世の常。それぞれの主張が複雑に絡みあった結果、トラブルを招くケースは多い。映画ライターのキシオカタカシ氏に主なトラブルの事例を聞いた。

「有名なのはジャック・ニコルソン主演の『シャイニング』(1980年)ですね。監督のスタンリー・キューブリックがもともと“他人の小説を触媒にして自分の物語を語る”タイプだったことで、原作者のスティーブン・キングと電話で意見交換はされたというものの、結果的に内容は大幅に改変されました。周知の通り映画は大ヒットしましたが、スティーブン・キングはいまだに映画を批判しています。もうひとつは『ネバーエンディング・ストーリー』(84年)。原作者のミヒャエル・エンデが脚本に参加していたにもかかわらず、ラストを改変されたとして激怒。製作を取り止めるかタイトルを変更するように求めましたが、結局クレジットから自分の名前を外すことで決着しました。また、『地球最後の男』はこれまで3度映画化されましたが、原作者のリチャード・マシスンは懲りない映画化には呆れていたようです。2作目と3作目に関してはこの小説の肝となるエンディングが、原作と丸っきり正反対ですしね(笑)。映画化権を売ったものの、作者の手の離れた所で意に沿わない形になった典型といえます。内容以外でモメた例としては『フォレスト・ガンプ』(94年)が挙げられます。映画の公開後、原作者ウィンストン・グルームは製作会社を相手取り利益配分をめぐる訴訟を起こしました。というのも、世界興収が製作費5500万ドルの12倍以上であったにもかかわらず、映画会社が『宣伝などの経費も計上したら、利益はなかったので払えない』と主張したからです」

 監督の作家性がゆえの原作改変や利益配分など、トラブルの理由としてはうなずける内容だ。しかしそこには、ハリウッド特有の法律構造や文化的背景なども介在する。

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2024.11.21 UP DATE

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