『You Never Walk Alone』
防弾少年団(販売元:BigHit Entertainment)
リパッケージ商売が常識のK-POP界。本文中の『WINGS』は韓国2ndアルバムで、そのリパッケージ盤が本作。これまた「ビルボード」誌アルバムチャートで61位まで上昇した。メンバーが必ず曲作りに関与した本作は、米ヒップホップ/R&Bの最新モードを色濃く反映したアルバムに仕上がっている。
韓国に帰れ!
先日、防弾少年団(バン・タン・ソニョンダン、略してBTS)は、米ビルボード・ミュージック・アワードで賞を獲得した初めてのK-POPアクトとなった。そんな彼らに対してインターネット上で寄せられたのが、冒頭に挙げた反応である。ほかにも……
「なに、このアジア野郎は? え、BTS? はぁ?」「本物の有名人じゃなく、厚化粧したアジア人たちが受賞ってどういうこと?」「誰だか知らないし、知りたくもない。何を言ってるかもわからない。最近はアワードも落ちたものね」などなど。さすがアメリカ。さすがトランプ時代。だが、変化への希望を胸に、この原稿を書く。
先に挙げたレイシストな意見とは逆に、快哉を叫ぶ人たちもいる。中心となっているのは、やはりアジア系アメリカ人。その背景には、彼らが耐えている苦境があるのだ。アジア系アメリカ人は2000万人弱。米総人口の6%ほどにのぼる。ユダヤ系アメリカ人の2倍以上いるのに、米メディアでの軽んじられようは酷い。
例えば、昨今のハリウッドで猛威を振るう「ホワイトウォッシュ」。アジア系のはずのキャラクターを、なぜか白人俳優が演じるという現象だ。特に映画『ドクター・ストレンジ』では、主人公の師であるエンシェント・ワン──本来はチベットのおじいさん──をスコットランドの女優ティルダ・スウィントンが演じて、アジア系コミュニティが絶望に沈んだ。
このホワイトウォッシュは、アジア系俳優から活躍の機会を奪うだけでなく、民族の自尊心を著しく損なっている。かねてからアメリカ黒人が「白人の偉業ばかりを教える学校教育に異議あり」と訴えてきたのと同じだ。