C・ホルツァー「カール・ハーゲンベックによるセイロン遠征で撮影されたシンハラ人」1885年、鶏卵紙
ドイツのハンブルグ・シュテリンゲンに1907年に開園したハーゲンベック動物園の開園当時の門には、ゾウやライオン、シロクマなどの像と並びアフリカやアメリカ原住民の像が装飾として使われている。この門は、かつてここで動物の収集・展示と人間のそれとが同じ地平で行われたことを今に伝えるものだ。
この動物園の設立者カール・ハーゲンベックは、アジアやアフリカなどで捕獲し調教した動物をサーカスや動物園、博覧会などに提供した世界的な動物商で、巧妙に隠された堀や岩で区切られた場所で動物を展示する「無柵放養式」という画期的な展示法を考案した人物として知られる。この展示の特徴は、檻で視界が遮られないことと、あたかも動物たちが拘束されずにその場で生息しているように見えることにある。例えば、手前の池にフラミンゴが飼われ、その向こうにシマウマ、さらに奥にはライオン、背景にそびえる巨大な岩山に山岳動物が見えるという具合に、観客たちは安全な場所からパノラマ的な眺めを楽しむことができた。