視聴者は彼に何を求めているのか? 現代ニッポンの病巣を表象? 人気者「りゅうちぇる」を科学する!

――テレビで見ない日はないと言っていい、大人気タレントのりゅうちぇる。なぜ、テレビ業界や視聴者にこれほどまでに受け入れられるようになったのか?あるいは、そのジェンダーレスなファッションと話し方は、日本社会に潜む“何か”を表象しているのか? この時代の寵児の本質を、複数の視点から解明していきたい。

AbemaTVでほうそうされているりゅうちぇるの冠番組『りゅうちぇる×ちゃんねる』。

 なぜ、こんなに人気があるのか――。80年代アイドルのような派手なファッションにオネエ言葉を操るタレント、りゅうちぇる。沖縄(本人いわく、ちぇるちぇるランド)出身の21歳で、原宿のアパレルショップでバイトしているときに、パートナーのぺこ(オクヒラテツコ)と出会って交際。読者モデルとしてすでに人気があったぺこの“変わった彼氏”として、2015年からはテレビ出演するようになり、今では単独で人気者に。16年の大晦日にはぺことの結婚を発表し、第67回NHK紅白歌合戦にも夫婦で出演した。

 当初は“おバカ枠”のタレントのひとりにすぎなかったが、今年2月5日に放送された『情熱大陸』(TBS系)では、「自分の発信したいことと世の中がズレてきたらどうするか」と質問され、「僕は、自分を貫くことは絶対曲げない。だけど、ぺこりんを守っていく上で、ファッションだったりとか、ほかの仕事とかバラエティとか今のお仕事にこだわらず、いろんなことに挑戦していきたいし、ぺこりんのためだったら自分のプライドを捨ててまでも頑張りたい」と発言し、評判となった。さらに、3月10日に放送された『りゅうちぇる×ちゃんねる』(AbemaTV)では、「僕は男の子だけど、小さい頃からかわいいものが大好きで。例えば、水を飲むときにも小指が立っちゃうし、何をしてもからかわれることが多かったんですよね」「ぶっちゃけ、これで男の子が好きなほうがまだわかりやすいし、楽って思っちゃってた。それか普通の男の子になりたいと思ってた。こんなにかわいいものが好きなのに、なんで女の子が好きなんだろうって」と心境を証、「LGBTに当てはまらない、名前さえない人たちも、今は人間が人間を愛する時代だなって僕は思う」とセクシャル・マイノリティに理解を示す発言をし、“おバカ”だけではない面も見せつけた。

 ミッツ・マングローブは、男性同性愛者=オネエという乱暴な解釈がされがちなノンケ社会において、「彼はノンケ男的に最も分かり易い事実(女とヤっている)で、自分がオスであることを証明し、結果『男(オス)として認められた日本初のテレビ的オネエ』に成り得た人物」と分析している(「週刊朝日」17年2月3日号)。

 おバカ男性タレントなのか、原宿系タレントなのか、オネエタレントなのか、既存のジャンルにあてはめることが難しいタレント、りゅうちぇる。彼について、男女論としての視点から著述家の湯山玲子氏、原宿ファッションの視点からスナップ雑誌「FRUiTS」の発行者である青木正一氏、クィア・スタディーズの視点から社会学者の森山至貴氏に、その人気について分析してもらった。

湯山氏の分析はこちら
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(文/安楽由紀子)

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