――ドキュメンタリー番組で取り上げられた壮絶な生きざまが話題となった“異形の人”は、澄んだ瞳で夢を語った─。
(写真/永峰拓也)
異形の人である。見た目はいわゆるオカマさん。しかし新宿二丁目感はない。眼がピュアである。観客わずか数人の小さなライブハウスで、鯉のぼりを体中に巻き付け「めだかの兄妹」を歌う。あるいは松葉杖のサンタクロース姿で「あわてんぼうのサンタクロース」を歌う。トチって松葉杖を落とす。借金は一時450万円を超えた。カネがないからと、本来は家畜の餌であるくず米をヤフオクで落札、大量のタバスコをかけて食べる。ガス契約をするのが苦しく、熱帯魚用のヒーターでバケツにくんだ水を沸かして湯浴みをする。外国人労働者に混じって解体作業現場で働き、大怪我をしてショーパブに勤務、絶望して自殺未遂にいたる……。
そんなさまが、2月に放送された『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)にて取り上げられ、その壮絶さが話題を呼んだ。懸命に生きてはいるが、あまりにも不器用。胸が苦しくなるほどの切迫感。いたたまれないが、なぜか目をそらせない──。
彼女の名はきらら。本名は大浦忠明、39歳の性同一性障害者。理系の有名大学を卒業するも、その障害ゆえ普通には就職できなかったという。
「私の場合、性同一性障害と自覚したのが遅くて、24歳のときなんです。デパートでたまたまかわいいワンピースを見かけて、『着たい!』と衝動的に思って。それまでも違和感を抱いたことはありましたし、そういう欲求は心の奥底にあったんですが、どこか無意識に押さえつけていたんですよね」