AK-69・FILLMORE・般若が筋肉で語る! ヒップホップにおけるマッチョイズムの歴史と変遷

――米ヒップホップ・シーンにおける筋肉の存在は、男らしさを誇示する一方で、ホモフォビアも深く関係してきたといわれている。近年では、ここ日本でも鍛え抜かれた肉体を披露するラッパーやDJが増えた。しかし、その背景にある理由は海外と異なる。本企画ではヒップホップの“筋肉史”を多角的に検証する。

(写真/cherry chill will)

 さまざまなスタイルで自らの力を誇示するヒップホップというアートフォーム。アメリカのシーンではその力の象徴として、“筋肉”は昔から切っても切れない存在であったが、近年その流れはようやく日本のヒップホップシーンにも定着しつつある。今回、日本のヒップホップ・シーンの筋肉コミュニティを代表する存在である般若とAK-69、俳優の金子賢が主催する肉体美を審査するコンテスト『SUMMER STYLE AWARD』にて2015年から2連覇を果たしたFILLMOREという豪華なメンツに集まってもらい、座談会を決行。普段であれば音楽談義で集結すべき3人だが、今回のテーマはもちろん“筋肉”だ。本稿では「ヒップホップとマッチョイズム」の関係性を探ると共に、彼らが鍛える理由を掘り下げてみた。また、筋肉・トレーニングを前面に押し出したラッパーとしては第一人者であるYoung Hastleには筋肉グルメを披露してもらい、最後には海外シーンにおけるヒップホップとマッチョイズムの流れについても深く考察したい。

──まず最初に、それぞれ体を鍛えるようになったきっかけを教えてください。

FILLMORE 小さい頃にネガティブな生活を送っていて。下を向いて歩いてしまってたり、「このままだと、周りにやられてしまう」って経験があって、その状況を打破するきっかけになったのがトレーニングでした。

AK-69(以下、AK) 俺の場合は、当時お世話になっていた社長さんが通っていた名古屋のアングラで超ハードコアなボディビル・ジムがあって、そこで鍛えるようになったのが始まりですね。

般若 まあ、セックスのためって言いたいんですけど……(笑)、真面目に答えると、すべてはライブパフォーマンスのためです。昔から筋トレはしてたんですけど、全然筋肉がつかなくて。30歳のときのワンマンライブ前に、「それまでに鍛えられなかったらヤメよう」って思って続けていたら、こうなりました。

AK ライブのため、っていうのは大きい。トレーニングを始めた頃って、筋肉をデカくすることしか考えてなかったけど、それだとステージの上で息切れしちゃうんですよ。筋肉を付けるだけでも相当なことだけど、やっぱり“動ける筋肉”が大事なんですよね。今は食事も生活のリズムも全部含め、すべてはステージのためにトレーニングがあるっていう感じです。

──「動ける筋肉と、見せる筋肉は違う」ということですね。

般若 筋肉をつけるだけなら、誰でもできると思う。それでライブもこなせるのなら、俺もAKもそうしてる。けど、こっちは1時間以上のライブを見越した上でトレーニングしてるんで。けど、トレーニングに正解はないので、その人の向かう方向が一番の正解だと思う。

──FILLMOREさんの場合は“見せる筋肉”のほうですよね。

FILLMORE ですね。僕はDJなので心肺機能とかは関係なくて、格好よくありたかったんです。極端に言ってしまえば、格好いい人から「この曲、いいよ」って勧められるのと、そうじゃない人から勧められるのでは、曲の受け入れ方も変わってくるんじゃないかなって。なので、常に見た目にこだわってますね。

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