法と犯罪と司法から、我が国のウラ側が見えてくる!! 治安悪化の嘘を喝破する希代の法社会学者が語る、警察・検察行政のウラにひそむ真の"意図"──。
三浦九段不正疑惑
2016年10月、日本将棋連盟が、三浦弘行九段に対し、対局中に将棋ソフトを不正利用したとして公式戦への出場一時停止処分などを発表。渡辺明竜王ら複数の棋士が疑惑を肯定する見解を示す中、三浦九段は潔白を主張し続けた。その後、第三者調査委員会が「不正の証拠はなかった」との調査結果を公表。谷川浩司会長らが辞任するなど波紋が広がっている。
『三浦&阿部健の居飛車研究』(マイナビ将棋BOOKS)
「本件疑惑の根拠として指摘された点はいずれも実質的な証拠価値に乏しいものであったといわざるを得ず、三浦棋士が本件不正行為に及んでいたと認めるに足りる証拠はない。(中略)連盟の三浦棋士に対する本件処分は、連盟の連盟所属棋士及び公式戦に対する規律として許容される範囲内の措置であり、やむを得ないものと評価されるべきである」
メディアを騒がせた、現役トップ棋士による将棋ソフトの不正利用疑惑。2016年12月26日に発表された第三者調査委員会のこの調査報告によって、それまで三浦九段を“クロに近いグレー”とみなしていた人も、ほぼ間違いなくシロ、と考えを改めるに至ったのではないでしょうか。元検事総長の但木敬一弁護士を委員長とする第三者調査委員会が、当事者や関係者だけでなく世間をも納得させるに足る見解を示し、騒動を一応の収束へと導いたわけです。
この一件のように、企業や官公庁といった組織の内部で背任や横領、パワハラ、セクハラなどの不祥事が起きたとき、その収拾を図る上でカギとなるのは、不祥事発生の事実を知る人のうち、どれだけ多くを“納得”させられるかです。“第三者委員会”の存在意義もまさにそこにある。弁護士や学識経験者ら、その不祥事とは直接利害関係のない任意のプロ集団によって示される見解だからこそ、人々は腑に落ち、結果として騒動が落着するわけです。