――2013年に成立した特定秘密保護法は、日本外国特派員協会に「報道の自由及び民主主義の根本を脅かす悪法」と断罪され、共謀罪の法案については日本弁護士連合会が反対の声明を発表。一部の人々から「悪法」とされるこの手の法律を我々はどう捉えるべきなのか。悪法問題を研究する法哲学者に話を聞いた。
『キング牧師―黒人差別に対してたたかった、アメリカの偉大な非暴力主義の指導者』(偕成社)
「悪法」として名高い法律といえば、ナチス・ドイツの反ユダヤ主義に基づく法律や、南アフリカのアパルトヘイト関連の法律などが有名だ。法学者は、そのような悪法の存在をどのように捉え、どう対処すべきだと考えているのだろうか? 静岡大学准教授で悪法問題に関する論文も多い法哲学者の横濱竜也氏に話を聞いた。
まず、「悪法に対してどう振る舞うべきか」については、大きく分けて2つの立場があるという。
「ひとつは、『道徳的に正しくない悪法は、そもそも法の目的に反しているので、悪法は法でない』とする考え方。この『不正な法は法ではない』という考え方は、わかりやすく図式化すると自然法論の立場といえます。その対になる存在としては、『いかに邪悪な内容の法律でも、法は法である』と考える法実証主義の立場がある。なお法実証主義では、悪法を法と認めながらも、悪法に対しては遵法義務(法に従う道徳的な義務)はないとしています」
つまり両者とも「悪法には従わなくていい」という考えでは共通しているわけだ。だが……。