河合奈保子、戸田恵梨香、新垣結衣…ZARD・坂井泉水は10万円! “プレミア写真集”の市場原理

――世の中に数多く出回っているアイドルや女優のグラビア写真集。その中には、古本でありながら発売時よりもはるかに高い値で売買されているものもある。では、そもそもどんな条件を満たしている写真集にプレミアが付くのだろうか? 専門店に高額本を挙げてもらいながら、この市場のカラクリに迫っていきたい。

カルチャーステーションには、プレミア写真集のコーナーも設けられている。

 熱心なマニアに支えられ、今も活発に売買が行われている女優やアイドルの“プレミア写真集”。しかし、そもそも90年代前半までは、アイドルの写真集や雑誌を集めている人は古本屋に、アイドルのレコード・コレクターは中古レコード屋に赴くことが一般的で、それぞれのジャンルのアイドル・グッズがバラバラで販売されていた。これをひとつの場所で購入できる“アイドルグッズ専門店”として90年代半ばに設立されたのが、東京・八幡山にあるカルチャーステーションである。同店はそうして集まったグッズの中から、過去にヌードになっていた女優や、デビュー時にだけ過激なグラビア活動をしていたアイドルの写真集など“発掘ネタ”を拾い上げ、「フライデー」(講談社)や「フラッシュ」(光文社)、「宝島」(宝島社)といった雑誌に情報を提供。かくして起こったのが、いわゆる“お宝ブーム”だ。その盛り上がりを受けて「お宝ガールズ」(コアマガジン)などお宝専門誌が誕生し、プレミア写真集は大きな市場を形成していった。

 その当時から、プレミア写真集の代名詞として君臨しているのが、ZARDのボーカル・坂井泉水こと蒲池幸子の『NOCTURNE』【1】である。ミリオンセラーを連発するトップ・アーティストでありながら、テレビにもあまり登場しなかった坂井が、過去にレースクイーンをしており、そのスレンダーボディを晒したセミヌード写真集を出版していたという事実は大きなゴシップとなり、『NOCTURNE』の現物は20万円を超えるほどの値を付けた。

 今回、お宝ブームの火付け役であるカルチャーステーションを訪れ、店長の田川修氏に同店で特に高額なプレミア写真集を紹介いただきながら話を聞いたが、彼はその筆頭として『NOCTURNE』を挙げている。

「この写真集には、人気・内容・希少性という高額プレミアが付く3つのポイントがすべて含まれているんです。なかでも、まずは被写体に多くの方が欲しがるような人気があるかどうかが重要ですね」

 一世を風靡したアイドルでも、結婚したり、不倫や犯罪といった致命的スキャンダルを起こしたりして、被写体の人気が下降すると、写真集の価値も下がるという。逆にいえば、何かのキッカケで人気が高まれば、写真集のプレミア価格も吊り上がるという“市場原理”だ。

ドラマ『逃げ恥』の影響で価格が高騰しているという、新垣結衣の『ガッキーブック』(新潮社/04年)。

「最近ですと、新垣結衣がファッション雑誌『ニコラ』(新潮社)のモデル時代に出したムック『ガッキーブック』の値が高くなっていますね。昨年ヒットしたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)で彼女の魅力を再認識したファンの方々が、争奪戦を繰り広げています」

 2つ目のポイントの“内容”は、写真そのものの良し悪しや芸術性という意味もあるが、もっと具体的にいうと“露出度”ということになる。写真集のなかで、セクシーショットをどのくらい披露しているのか。あるいは、“ヌード”と謳われていてもセミなのかヘアなのか。そうしたことによって、価値は大きく変わってくる。

 最後の“希少性”に関しては、2つの意味がある。ひとつは、そのタレントが「この写真集だけで脱いでいる」「売れる前だからこそ実現したセクシーショットが掲載されている」といった内容の希少性。そして、もうひとつは、写真集自体の数が少ないという物理的な希少性だ。

「単純に古いものは現存数が少ないので、高値が付きやすい傾向にあります。また、マイナーな出版社から刊行された写真集で、もともとの数が少ないものもプレミア化する要因になりますね。逆に言うと、宮沢りえの『Santa Fe』(朝日出版社)は、今も人気があり、内容も良いですが、発行部数が155万部とあまりに多いため、常に定価以下で販売されています」

 この3つのポイントを押さえながら、改めて『NOCTURNE』を検証してみよう。坂井はZARDの絶頂期はもちろん、亡くなった現在でもカリスマ的な支持を集めているので、“人気”の点では申し分ない。“内容”は、セミヌードにとどまっているが、これが彼女の最大露出であり、その価値は非常に高いといえる。さらに“希少性”については、『NOCTURNE』の版元である白泉社が写真集を頻繁に刊行するような出版社ではないこともあって、刷り部数も少なく、流通量も少なかったと推測される。

「無線綴じ(糸や針を使わずに本の背を糊で固めて綴じる製本方式)の並製(ソフトカバー)本なので傷んでしまうことが多く、状態の良い美品は、まさに希少。その上で、めったに市場に出ることがない“帯付き”だと、さらに数万円は価値が上がる。現在、当店で扱っている帯付きの『NOCTURNE』は、9万7200円で販売しています」

『NOCTURNE』は制作過程をはじめ謎に包まれた部分が多いが、そんなミステリアスさも含めて、まさにキング・オブ・プレミア写真集といえる逸品だ。

価格を吊り上げる過去と現在のギャップ

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