――こちらの記事では、アラサーライターによる少女マンガのキスにおける分析を紹介した。この記事では、具体例6作分を持って分析してみよう。
■童貞オブ童貞キス!
『逃げるは恥だが役に立つ』
主人公・みくりが平匡の家事代行として働くうちに、“契約結婚”をすることになる。海野つなみ著、講談社「Kiss」にて12年より連載、既刊8巻。
左、4巻P68、遠出した電車の中で突然のキス。ふいに顔が近づいたときにキスをされるのは女性向けマンガでもドキドキするシーンの代表格だが、なんだろうこのグッとこない感じは。そして右は、5巻P35におけるキスシーン。
ページをめくれどもめくれどもキスが登場せず、なんと4巻までじらされる。えらく遅咲きである。何しろ主人公2人は片や大学院卒の奥手な女、片や36歳の高齢童貞だから無理もない。その4巻でのキスも、表面上は相手に好意のかけらも伝えようとしていないところに突然ドーン。この一足飛びでわびさびのない感じが童貞オブ童貞キス! その後、なんとなくお互いこのキスについて触れることができずにスルー。ギクシャクしながらようやく2度目のキスをするのが次の5巻。6巻でようやく初セックス。そっけないタッチの絵柄も手伝って、棒人間同士がキスしているような、カクカクとかパサパサといった擬音が似合いそうななんとも色気のないキスではあるが、全体を通してみると平均して1巻に1回弱のペースでキスしている。これもひとえに6巻での初セックスの賜物。なお、セックス中の明確な描写はないため、実際にはセックス中のを合わせると、もっとキスの回数は多いのではないかと思う。