――フリースタイル・バトルのブームに沸く日本語ラップ界だが、今、それとは別の才能で頭角を現しつつあるRyugo Ishida。そんな若きラッパーに、地元・茨城県土浦市で話を聞いた。
(写真/岩根 愛)
時代がひどくなるほど、音楽は面白くなるのだろうか。本誌で連載中の『川崎』は、題名の通り、神奈川県川崎市川崎区を、差別や貧困の問題が渦巻く日本の暗部の象徴として捉え、そこで生き抜く若者たちを追ったルポルタージュだ。そして、現代において、過酷な環境をもっとも反映する文化がほかでもないラップ・ミュージックで、同連載に多くのラッパーが登場するのは必然だといえる。また、川崎のような問題は全国各地で可視化されつつあり、そこから、才能あふれる若いラッパーが次々と現れ始めているのだ。
そんな中、耳の早いリスナーの間で2016年のブライテスト・ホープと目されているのがRyugo Ishida。彼が自主制作したファースト・アルバム『EverydayIsFlyday』は、浮遊感のあるビートに乗せて刹那的なライフスタイルが歌われる一方、妙にほろ苦い後味が残る傑作だ。果たして、そのバックグラウンドはどんなものなのだろうか? 彼に話を聞くため、アルバムを通販で購入した際、発送元として書かれていた茨城県土浦市へと向かった。
「この間も、友達が首吊って死んじゃったんですよ。捕まって出てきたばっかりで、借金で悩んでたみたいで。うちの親も首吊ろうとしたことあるし、周りに金で困ってる人は多いですね。そんなことで死ななくたっていいのにって思うんですけど。生きることは大変でも、楽しいですよ」