――7月13日夜、「天皇陛下、生前退位の意向」という大スクープがNHKから放たれた。そして8月8日には天皇自らが「お気持ち」を直接発表した。これまでも近代以降の皇室の伝統やタブーを次々と破ってきた今上天皇が最後に落としたこの大爆弾を、我々国民はどう引き受けるべきなのか。
『天皇陛下の全仕事』(講談社現代新書)
天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく――かの有名な、日本国憲法第一条に記されたこの一文が、今改めて日本国民の眼前に突きつけられている。
さる7月13日夜、「天皇陛下『生前退位』のご意向」という特大スクープがNHKより飛び出し、ニュースサイトからスマホのニュースアプリに至るまで、各所を駆け巡った。宮内庁側は即座に否定したが、翌日から新聞各紙や週刊誌でも詳報が相次ぎ、さまざまな臆測が飛び交った。
各紙誌の報道の方向性は少しずつ異なっており、その比較はこちらの記事で展開している通りだが、共通して述べられているのは、今上天皇が近代皇室の伝統やタブーと相対し、各種の慣例を破ってきた人物であることだ。最もよく知られているところでは、皇室初の民間出身の妻を娶ったこと、子育てを夫婦の手元で行ったこと、そして最近では、従来土葬が行われてきた葬儀を、火葬にして御陵を簡素なものとするという決断、といったあたりだろう。