――こちらの記事で見てきた通り、観光の街として戦後花開いた京都だが、その内側にはいまだに多くのタブーを抱えている。ここでは、その中でも大きな権力を持つアンタッチャブルな存在にスポットを当ててみよう。
『京都ぎらい』(朝日新書)
「仏教会を敵に回したら観光が成り立たないから、京都市にとって京都仏教会に逆らうことはタブーなんです」
京都地元メディアの編集者が耳打ちする。京都仏教会とは、宗派の枠組みを超えた文化活動や福祉活動のための団体で、各本山や財団法人である全日本仏教会との連携を行っている。
京都といえば清水寺や金閣寺といった寺社仏閣を思い浮かべる人も多く、当然ながら、それらの観光資源としての価値は計り知れない。しかし、前出の編集者によれば、「お寺を訪れるのはあくまで“拝観”であって、“観光”ではない、と仏教会は主張します。例えば、お寺側は『ライトアップ』と言わず、『夜間拝観』という言い方をする。夜、お参りに来る人の安全のために照明をつけている、という理屈です」(同)
これには宗教者側の「宗教施設なので、しっかりと拝んでもらいたい」という思いがあると同時に、現実的な問題として宗教活動による収益は非課税であることが大きい。寺社への参拝が“観光”だとしたら、そこで生じた利益には税金がかかるが、宗教的な“拝観”であれば非課税となる。そのため、仏教会としては寺社参拝が“観光”と呼ばれることを是としないのだという。