「アメリカのラッパーの立ち位置を日本に置き換えると芸人になる」!? ヒップホップとお笑いの接近史解析

――かつてお笑いの世界においてラップといえば、「YO,YO」「チェケラッチョ」「俺は◯◯生まれ××育ち~」と揶揄される存在だった。だが時はたち、芸人によるフリースタイルバトルが開催されたり、ラップのルールを理解した番組やネタが成り立つなど、今お笑いとヒップホップはかつてないほど接近している──。

「芸人ラップ王座決定戦」は戦極公式動画がYouTubeに上がっているが、中川パラダイス×レイザーラモンRG戦はヤバすぎるためか全カット。今後の開催にも期待。

 ビートが流れる。向かい合った男2人がマイクを強く握ってラップを始める。ありふれたMCバトルの光景だ。しかしやがてラップの内容は普段のバトルでは耳にしないような女性関係の暴露に踏み込み、お互いが顔をこわばらせる中で危険度が加速していくと、会場は歓声と爆笑に包まれていった。今、ステージに立っているのはラッパーではない。名のある芸人、レイザーラモンRGとウーマンラッシュアワー・中川パラダイスだ。

 これは昨年8月、渋谷で開催された「芸人ラップ王座決定戦」の一幕である。数カ月後にはよしもとの劇場で、ラッパーが芸人をディスる変則的MCバトル「ディスペクト」も行われた。ラップのステージに芸人が立ったかと思えば、芸人の領域にラッパーが進出。最近、日本語ラップとお笑いの接近が目立っている。

 テレビでは『フリースタイルダンジョン』(以下、『FSD』/記事「日本語ラップの正しい歴史」参照)のブレイクと前後して、バラエティ番組内でフリースタイルラップが取り上げられる機会が増加した。また、アンジャッシュ・渡部建、くりぃむしちゅー・有田哲平など、長らく「日本語ラップ好きといえば」ということで知られていた芸人の顔ぶれにも変化が見られる。オードリー・若林正恭は日本語ラップリスナーであることを明言し、自身のラジオ番組で相方の春日を攻撃するラップを投下(春日もアンサーを発表し、抗争が勃発)。そして千原ジュニア、カンニング竹山など、ラップの面白さに言及する芸人も多い。

 ネタを見ても、一昔前までは「チェケラッチョ」「YO、YO」と、ラッパーを戯画化して茶化すのが定番だった。それが近年は押韻のルールを前提に笑いを取るネタもあり、若手の注目株・ニューヨークに至っては、素のKREVAのモノマネでひとネタ引っ張る漫才まで披露している。芸人の日本語ラップ教養は確実に高まったといえよう。

「アメリカのラッパーは日本でいうと芸人の立ち位置」

 そもそも、ラップとお笑いの親和性は高い。

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