「わたし、脱いでもすごいんです」を地でいく女たち…海外のヤリマン整形美女から学ぶ“流出”の経済学

――アメリカを代表する“お騒がせセレブ”こと、キム・カーダシアン。07年に起きたセックステープ流出事件を機に、彼女は芸能界から干されるどころか、巨万の富を得たセレブリティへと変貌した。「なんの取り柄もない」と揶揄される彼女が、世界中から注目される理由はなんだろうか? 本稿では彼女の破天荒な生きざまと経済の関係性を分析してみたい。

(絵/小笠原徹)

 流出――今やその言葉が誌面の見出しを飾ったり、テレビのラテ欄に記されていたのなら、誰もがネガティブな印象を抱く。「不倫写真か」「LINEのスクリーンショットか」、「ハメ撮りか」。日本ではこうしたスキャンダラスな流出騒動が起きれば、政治家でも芸能人でも辞職や引退・休業、あるいは干されて自然消滅に追い込まれるケースがほとんどだ。しかし、アメリカは違う。思考が違う。スケールが違う。まるでその流出が成功の証(ハメ撮りだった場合、まさに「性交の証」と言えるが)と言わんばかりに、スターダムを駆け上がるケースがザラにある。

セックステープの流出に比べたら、この程度のヌード写真なんて屁レベル。キムはパパラッチに自らの出没現場を事前に教えるほどの頭脳派。

 その筆頭格が、Huluでも配信されている『カーダシアン家のお騒がせセレブライフ』(以下『セレブライフ』)の主人公であり、アメリカを代表するヒップホップアーティスト、カニエ・ウェストの妻でもあるキム・カーダシアンだ。飛び交う罵声もなんのその、優れたスルースキルで身をかわし、いつの間にやらアメリカで彼女を知らぬ人間なんて存在しないほどの認知度に至った。そもそも、キム・カーダシアンとは何者なのか。簡単に人物を洗っておこう。

 1980年、ロサンゼルス生まれで、OJシンプソン弁護団の一員として名を馳せた弁護士、故ロバート・カーダシアンの次女として生を授かる。そんなキムは、人気R&Bシンガーのブランディ(後述する同じくR&Bシンガーのレイ・Jの実姉)のパーソナル・スタイリストとしてエンタメ業界に参入、元祖お騒がせセレブ、パリス・ヒルトンの友人/パーソナル・アシスタントとしてリアリティショウにたびたび登場し、注目を集める。そして先述の『セレブライフ』の放送が07年にスタートすると、パリスの人気と知名度を即座に凌駕。14年のカニエ・ウェストとの結婚(このときキム34歳、結婚は3度目)で箔を付け、今や“なんの芸もない”ままアメリカ芸能界の頂点を極めるという、前代未聞の偉業を成し遂げた女性として知られている。

 さて、『セレブライフ』が高視聴率をマークしたところで、キムが人気者となった本当の理由とは、いったいどこなのか――。彼女(あるいはカーダシアン一家)にとって唯一のウリは“スキャンダル”である。その中でも、最初にして最大級のボムが、キムのセックステープ流出事件だ。しかもこの事件は、同番組がスタートする直前に流出し、放送前から番組に対する注目度を上昇させる大きな要因となった。何が画期的だったかといえば、日本なら放送無期延期、もしくはお蔵入りとなりそうなスキャンダルを“追い風”にし、さらなるメディアへの露出を増やしたことだろう。

 実際、アメリカにおいてセックステープの流出は、それほど驚くような出来事でもない。キム以前にも、パメラ・アンダーソンやパリス・ヒルトンの流出があったが、彼女たちの場合は「有名セレブだからこそ価値アリ!」の見ごたえあるもので、とりわけ“売名”のための流出ではない。しかし、キムはそれを“有名になるための道具”として活用し、さらにはセックステープの販売元を訴え、約500万ドル(約5億円)を手にする。ちなみに、それからキムの知名度はうなぎ登り、昨年は5300万ドル(約57億円)を稼ぎ、その純資産は8800万ドル(約96億円)を超えるともいわれている。

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