“文春砲”甘利事件から読み解く、“フィクサー”不在と日本社会の変容

法と犯罪と司法から、我が国のウラ側が見えてくる!! 治安悪化の嘘を喝破する希代の法社会学者が語る、警察・検察行政のウラにひそむ真の"意図"──。

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金銭授受で甘利氏辞任
2016年1月、甘利明前経済再生相が、都市再生機構(UR)とのトラブルを抱えていた千葉県内の建設会社の総務担当者から口利きを依頼され、その見返りとして1200万円以上を受け取ったとする記事を「週刊文春」が掲載。甘利氏は会見で一部の現金授受を認め、秘書が受け取っていた現金の一部を使い込んでいたことを公表。目に涙を浮かべ辞任を表明した。


 ベッキーの不倫疑惑、SMAPの解散騒動、宮崎謙介衆議院議員の不倫辞職と、年明けから連発された“文春砲”の中でも最強の破壊力を有していたものといえば、やはりこの事件でしょう。2016年1月、甘利明前経済再生相は記者会見を開き、自身と秘書の賄賂疑惑の責任を取って涙ながらに辞意を表明したのでした。

 しかし、もしも大物の“フィクサー”がいたら、どうだったでしょうか? 岸信介らの首相就任時に絶大な影響力を行使したとされる児玉誉士夫のようなフィクサーがいまも存在していたら、果たしてこの一件は、安倍政権の重要閣僚である甘利氏の辞任という大騒動にまで発展したでしょうか?

 例えば、暴力団員にスキャンダルの情報を握られ、脅迫されている政治家がいたとする。そこで相談を持ちかけられるのが、いわゆるフィクサーです。豊富な資金力によって政財界から暴力団まで幅広い人脈を築いているフィクサーは、政治家の懇願を容れ、その暴力団員の親分や上部組織の幹部と連絡を取る。そして設けられた話し合いの場で、親分や脅迫者にカネを握らせて黙らせる。結果、政治家のスキャンダルは表沙汰にならない。かつての日本には、そういう動きをひとつの典型とするフィクサーが、大物から小物まで多数存在していたといわれています。

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