執筆の衝動、本業の葛藤、そして決意…【小説家・加藤ミリヤ】が語る「音楽と文学の奇妙な類似」

――歌手を本業とし、アパレルブランドのデザイナーとしても活躍するシンガー・ソングライター、加藤ミリヤ。実は彼女にはもうひとつ「小説家」としての顔があった。アーティストとして確固たる地位を築き上げ、ただでさえ多忙な本業に加えて、なぜ彼女は小説を書き進めるのか? その“衝動”の根幹をえぐった。

(写真/石黒淳二)

 芥川賞を受賞したピース・又吉直樹『火花』のような空前の大ヒット作が世に出る一方で、ほとんどの“タレント作家”たちは、版を重ねることすらできずフェードアウトしているのが現実だ。ところが2011年の処女作刊行以来、すでに3冊もの小説を上梓し、今なお旺盛に書き続けているアーティストがいる。加藤ミリヤ、27歳。

 すでに音楽の舞台で名声を得たはずの彼女が、毀誉褒貶の「毀」と「貶」ばかりが横行している文学界で、あえて戦い続ける理由を聞いてみた――。

ルールのない世界で不満を解き放ちたかった

「歌手にはそれぞれに歌う理由はあるけれど、私は“歌が好きだから”という理由で歌手を志したわけじゃないんです。ましてや、人前でそんな発言をしたこともない。あくまで私自身の“言葉を伝える手段”として音楽という形態を選んだんです。けれど、歌の歌詞には、実は制約がある。また、言葉数を削ぎ落とす作業から、韻を踏む作業など苦労する点も多い。それに引き換え、小説の言葉には基本的にルールはないと教えられたこともあって、私の心の感覚を解き放つには格好の舞台だと感じたんです」

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