エロラブコメの過去と現在――【中西やすひろ・遠山光】が叫ぶ!表現規制を強いられるエロ表現

――1980年代の少年誌において大きな流行を作り上げた“エッチなラブコメディマンガ”。しかし、「児童ポルノ追放運動」の魔の手により、表現は自粛を強いられ、有害図書問題にも発展。その規制は、少年誌のみならず、青年誌にまで波及。80年代を代表するエロラブコメ御三家が語る、エロ表現の過去と現在とは?

青春時代よ、再び!
少年の欲望を具現化したエロラブコメの金字塔2作

『Oh! 透明人間』
中西やすひろ/全11巻
「月刊少年マガジン」にて1982年4月号から87年4月号まで連載。イクラを食べると透明人間になってしまう主人公・荒方透瑠は、その能力を駆使し、世の男性の願望である“のぞき行為”に勤しむ。更衣室や浴室と、素っ裸であらゆる場所に出向いては、ヒロインの荒方良江のおっぱいに挟まれたり、お尻に圧迫されるなど、ありがたきハプニングにたびたび巻き込まれる。

『ハートキャッチいずみちゃん』
遠山 光/全9巻
「月刊少年マガジン」にて82年12月号から87年4月号まで連載。人の心を読めるヒロインの高校生・原田いずみは、勉強も運動もできないダメ同級生の主人公・明智菊丸に日夜、翻弄される。しかし、いつしかその能力は消失してしまい、菊丸の的確すぎる女体調教により、いずみは逆らうことのできないマゾ体質となってしまう、ドタバタエッチなラブコメのマスターピース。

 今からさかのぼること約30年前の1980年代、少年誌で「ここまでやっていいの……!?」という過激なエロラブコメマンガが一大ブームとなった。“プルルンッ”という擬音のもとに露わになる、女の子のおっぱいやお尻の描写は、本誌読者世代なら誰もが目にしたことのあるヒトコマだろう。そこで本稿では、当時のエロマンガを代表する『Oh!透明人間』の中西やすひろ氏、『ハートキャッチいずみちゃん』の遠山光氏という、エロラブコメの金字塔を打ち立てた2人のレジェンドに、その破天荒なアイデアの源泉から、現在のエロマンガが抱える表現規制問題までたっぷりと語ってもらった。

物語の着想は少女マンガの描写

(写真/斎藤大嗣)

──まず、中西先生の『Oh! 透明人間』【1】(以下、『透明人間』)は、どのようなアイデアから生まれたマンガだったのですか?

中西 1980年くらいでしょうか、武蔵野美術大学在学中に講談社に持ち込みをしたのがきっかけです。その時に話を聞いてくれた編集者からは「スポーツマンガを描かないか?」って提案されたんですよ。でも、スポーツの知識は皆無だったし、持ち込みしたマンガの内容に沿った「美少女のパンチラがふんだんに見られるラブコメを描きたいです!」と熱弁したところ、「じゃ、主人公が透明人間になる設定のエロマンガ、どう?」というアイデアをもらい、作品の基盤が出来上がったんです。「イクラを食べると透明になる」という設定に関しては、「あくびやくしゃみで透明になってしまったら、しょっちゅう透明になってしまう。だったら食べものかな。でも、頻繁に食卓に並ぶような食べものじゃなく、ほどよく高価で滅多に食べず、かつ子どもの小遣いでなんとか買えそうなもの=イクラ」というふうにたどり着きまして。

「興奮すると透明じゃなくなってしまう」という設定のおかげで過激すぎる表現まで行かなかったというか、結果的に主人公が「元の姿に戻ってしまう」というリスクの高さが、エロ表現のよい縛りになった形ですね。それでとんとん拍子で「月刊少年マガジン」の増刊号に読み切りが掲載されることになったんですが、少年誌だったのに、おっぱいも乳首もしっかり描いたところ、読者アンケートハガキで人気第1位に輝いてしまって。当初は読み切りの予定だったんですが、編集長のジャッジでいきなり連載が決定し、その後は素っ裸や大股開きの描写と、なんでもアリになっていきましたね。

遠山 『ハートキャッチいずみちゃん』【2】(以下、『いずみちゃん』)もそうでした。当初は読み切りの予定でしたが、読者からの反響が大きく、「じゃ、連載で」みたいな話になって。それが五十嵐(隆夫)さん(当時の「月刊少年マガジン」編集長)のやり方だったんでしょうね。

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