『AKB48』――AKB48の10周年とこれからの課題

批評家・宇野常寛が主宰するインディーズ・カルチャー誌「PLANETS」とサイゾーによる、カルチャー批評対談──。

宇野常寛[批評家]× 竹中優介[プロデューサー]

2013年の総選挙で指原莉乃が1位になり、ヒット曲「恋するフォーチュンクッキー」が生まれた。

AKB48が結成10周年を迎えた。国民的アイドルグループとして認識されるようになり、総選挙が多くの人の耳目を引いた時期から比べると、最近はその勢いがなくなっているようにも感じられる。センセーショナルさを推進力としてきたグループは、勝利を収めた後にどこへ向かうのか?

竹中 テレビ業界では、4~5年くらい前から「AKBも今年がピークで、もうブームは終わる」と言われ続けてきました。そう言われながらも結果この12月で10周年を迎えたわけで、それはやっぱりすごかったね、という見方が今は主流になっている感じがあります。

宇野 もちろん一時期のような右肩上がりの空気があるとはお世辞にも言えないし、かつてのように社会にインパクトを与えることも少なくなっていると思うけど、これは停滞であると同時に、逆に安定しているともいえると思う。「来年一気に凋落する」なんて、誰ももう思ってないでしょう。

竹中 AKBが生み出した「アイドル」というものの新しい生き方のシステム自体が発明で、そこでつかんだ地盤がしっかりあるから、メディア露出の量が多少増減しても、そう簡単にブレない力を持った。それが10年間で培ったアイドルビジネスモデルの強さですよね。

宇野 それによって、いろんなものが変わりましたよね。まず、ライブアイドルという文化を完全に定着させたこと。それからいわゆるAKB商法以降、映像や音声というコンテンツ自体にはお金がついてこなくて、究極的にはコミュニケーションにしかお金はつかないというのがはっきりしたこと。アイドルでいえば握手会がそうだし、フェスなんかもそう。情報社会下のエンターテインメントはコミュニケーション消費以外にないんだということを、AKBが最も大きく可視化させて、そして最も大規模に展開していることは間違いない。いまだに映像や音声にお金払っている人もどんどん「この人の人生を応援したいから買おう」という意識になってきている。

竹中 「参加型」という点ですよね。昔はアイドル=メディアを通して見る遠い世界の芸能人だったのに、AKB以降、今宇野さんが言ったように「その人の人生を応援する」、つまりサポーターとして、人の人生に自分も参加しているという気持ちにさせるものになった。

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