――梶原一騎、小池一夫、武論尊、雁屋哲……。マンガ原作者といえば彼らのような大物たちが思い浮かぶが、最近は多作のヒット作家は目にしない。一方で、ネームまで手がける原作者も増えているという。作業の内容もギャラの取り分も一般読者にはうかがい知れない、マンガ原作者の裏側について業界関係者に聞いた。
マンガ業界を忠実に描いた『バクマン。』は、実写映画版も大ヒットを記録した。
高校生のマンガ家・原作者のコンビが主役のマンガ『バクマン。』【1】は、15年公開の映画版もヒットを記録。同作では、原作者のシュージンがネーム(コマ割りや構図、セリフ、キャラの配置などを大まかに表した絵コンテのようなもの)まで描いており、「原作者ってストーリーを考えるだけじゃないの?」と驚いた人も多いだろう。
「ネームまで描くマンガ原作者が目立つようになったのは、ここ10〜15年くらいのことですね。その背景には、『マンガ家が原作者になる』という文化が根付いたことが大きい。『バクマン。』の大場つぐみ先生も、もともとはマンガ家という経歴を明かしていますし、別名義で原作仕事をしているマンガ家も多くいます」
そう話すのは『このマンガがすごい!』(宝島社)に創刊当初から関わり、マンガ関係の取材を数多く手がけるライターの奈良崎コロスケ氏。では、マンガ原作の書き方には、ほかにどのような方法があるのだろうか? 集英社第二回青年漫画原作大賞受賞でデビューし、現在も歴史マンガの原作を多く手がけるすぎたとおる氏に解説願おう。
「まずは『小説型』。梶原一騎先生(『巨人の星』『あしたのジョー』など)のように、小説家志望だった昔のマンガ原作者には、このパターンの人が多かったでしょう。そして、文字のみのタイプでは最も一般的なのが『脚本型』。私も基本的にこのタイプで書いています」(すぎた氏)
そして、脚本型をさらに発展させたのが、マンガ原作者の大物・小池一夫だ。
「小池先生は、脚本型の原作に、コマの演出まで書き込むのが特徴です。さらにさかのぼると、彼が独立前に所属していた、さいとう・プロダクションの存在も、プロのマンガ原作者という職業を確立させる上で大きな存在でした。さいとうプロは『ゴルゴ13』【2】などの作品で、徹底した分業を推し進めたことで有名ですが、さいとうプロに脚本専任スタッフとして最初に採用されたのが小池先生だったんです」(同)