見えたのは繊維産業の落日だった…… 山ガールブームは東レの陰謀!? 怪しき陰謀説を全力で検証する!

――現在、経団連の会長は東レの原元会長であり、前任の住友化学工業米倉氏と2連続で化学業界からの選出となっている。東レは、化繊業界では圧倒的覇者だ。なぜ、同社は財界総理と呼ばれる経団連の頂点についたのか──? 繊維系企業や経団連の今を見つつ、日本経済の中の化学系企業を分析してみた。

山ガールはファッションも大事! 「山とかわいいワ・タ・シ」を盛り上げるためのサイトが多数立ち上がっているようだ。

 2009年、「山ガール」なるブームが局地的に日本を席巻したのは記憶に新しいところ。気まぐれな女性ファッション誌が便乗し、「山スカート」といわれる登山用スカートやカラフルなウェアが発売され、これまでファッションとは縁遠かった登山に、明らかにおしゃれな女子が群がるようになった。結果、20~30代女性の登山人口が急増したのはブームの功績だろう。だが、突如として降って湧いたようなこのブーム。その背景には、ある団体が裏で糸を引いていた……そんなウソみたいな話が囁かれているらしい。

 その団体の名は、なんと「経団連」。

 トヨタ自動車、新日鐵住金、そして日立製作所など、日本代表企業の経営者たちが名前を連ねるこの団体。しかし、世間では、謎に包まれたそのイメージからか、山本太郎議員が7月19日放送の『日曜討論』(NHK)で、「この法案(安保法案)の真の目的っていうのは、安全保障ではなく経団連の金儲けなんです」と発言したように、国家陰謀論の「総本山」として責任を押し付けられることは珍しくない。しかし、日本の「最高峰」たる企業が、どうして山ガールブームなどという陰謀を張りめぐらせるのか!?

 そのカギを握るのが、経団連会長の原定征氏だ。07年から経団連副会長を務め、14年からは会長職についている原氏は東レの出身。東レといえば、山ガールたちが愛用する登山ウェアに使用される合成繊維(合繊)の国内トップメーカー……。自然を愛する山ガールたちが、「自然」とはかけ離れた合繊のウェアを愛用するのはなぜか? そして、彼女たちはなぜ突然山に魅せられるようになったのか? 嗚呼、すべては、原=経団連が引いている「糸」なのだろうか!?

 東レ、原会長、そして、経団連の実情を解明しながら、このトンデモな「ヤマ」を検証してみよう!

世界で洋服が売れず合繊はすっかり斜陽

 合繊産業は00年代に入り、国内需要の低迷とグローバリゼーションによって中国をはじめとするアジア諸国からの安い合繊の流入による不況が本格化。帝人はナイロンから撤退し、旭化成はアクリルから撤退するなど、大手各社のトレンドは「脱繊維」に傾いていた。しかし、02年に東レの社長に就任した原氏は「われわれは、『繊維の東レ』という顔は捨てないでいきたい。繊維産業というのは、やはり衣・食・住の基本ですしね。それを支える会社は東レなんだと」(「財界」06年4月25日号)と、繊維事業を守りぬき、ナイロン、ポリエステル、アクリルの3大合繊をカバーできる国内唯一のメーカーとなる。そして、そんな東レの合繊事業を支えたのがユニクロだ。03年には共同開発したヒートテックが大ヒット商品となり、06年からは「戦略的パートナーシップ」と名付けられた業務提携関係を築く。繊維ジャーナリストの南充浩氏はこう語る。

「機能性衣料はもちろん、そのほか通常の衣料品でも合繊が使われているユニクロ商品のほとんどが、東レの素材に置き換わっています」

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