特許横取り!日本人ノーベル賞級発見も強奪!? 医薬品業界の利益追求のヤリクチとは…

――世界トップクラスの企業の売り上げは年間5兆円以上。そのうち研究開発費は1兆円を超えることもあるという医薬品業界。そこでは利益追求のために特許の横取りに近い事態や、法外な価格設定や値上げ、時には論文の改ざんなども行われている。日本人研究者が巻き込まれたケースを例に、その実情を紹介する。

巨額の売り上げを誇る医薬品業界では、利益追求のために非人道的な手段が横行しているようだ。

 日本の市場規模は約10兆円、世界の市場は約100兆円。ファイザーなどのメガファーマと呼ばれるトップ企業は、年間の売り上げが5兆円を超えるレベルに……。

 マスコミで報道される機会は少ないものの、圧倒的な市場規模を持っているのが医薬品業界だ。この世界では、ひとつの新薬の誕生が数千億円、数兆円という利益に結びつくこともある。そのため、新薬の開発から特許の認可、販売までの過程では、相当にえげつない争いが繰り広げられているのだ。そこで今回は、日本人研究者もかかわった、ノーベル賞級ともいわれる世界初のエイズ治療薬の特許問題を紹介しながら、業界の奥に潜む闇の部分まで見ていきたいと思う。

 世界初のエイズ治療薬・AZT(アジドチミジン)の開発に、日本人がかかわっていた……ということは、日本ではさほど知られていないのではないだろうか? その日本人研究者とは、現在は熊本大学医学部で教授を務める満屋裕明博士だ。その功績により、近年はノーベル賞発表の時期になると、受賞の可能性を報じられる機会も増えている人物である。

 満屋氏がAZTのエイズ治療への効果を発見したのは、彼がアメリカのNIH(国立衛生研究所)に勤務していた1985年のこと。その発見は、あらゆる意味で快挙といえるものだった。『エイズ治療薬を発見した男 満屋裕明』(文春文庫)の著者で、満屋氏に20年近くにわたって取材を続けているジャーナリスト・堀田佳男氏は次のように語る。

「当時はエイズ・ウイルスの感染経路が明らかになっていなかったこともあり、ほとんどの医師や、医薬品会社の研究者は、エイズ・ウイルスを扱う実験を避けていました。その中で彼は、エイズ治療薬の研究を提案された際、『医師の誰かが取り組まなければいけない』と考え、研究に着手しました。その勇気ある行動を『勝手な冒険主義だ』と批判する研究者もいましたが、その当時のエイズ・ウイルスを扱う研究が、命の危険を冒す行為だったことは間違いないでしょう」

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2024.11.22 UP DATE

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