――ゲイでもなければニューハーフでもない、ドラァグクイーンでもない──セクシュアルマイノリティ人気の時代に颯爽と登場したニュー・アイコン志願者、ここに立つ。
(写真/チャニ)
休日、無人のオフィスに立つ美人がひとり。ツイードのパンプスが、デスクを踏みしめている。
「女装歴は3年くらいです。15、16歳の頃は親の目を盗んで週末にメイクをしたり女の子の服を着たり、趣味程度にやっていました。本格的に始めたのは23歳の頃。それからずっと毎日メイクして、徹底して女物の洋服を着てました」
肉体は100%の男性、ホルモン注射も手術もなしのY染色体を持った生き物で、一人称は「僕」、そして元AV女優──それが大島薫だ。近年流行りの言葉でいえば、「男の娘」「女装男子」などと呼称してもいいのかもしれない。でもそれも少し違っている。