白黒はっきりしない不正会計の黒幕
多くの疑問を残した東芝の不正会計問題では、トップ、幹部の首切りによって終焉を迎えつつある。経済的な視点から論じられるこの問題だが、会計士や監査法人の視点からすると、多少ズレがあるようだ。白黒はっきりしない“東芝疑獄”は、一体何が黒で、何が白だったのだろうか?
『エコ・リーディングカンパニー東芝の挑戦 環境戦略が経営を強くする』(日刊工業新聞社)
今年のゴールデンウィーク前からメディアを騒がせていた東芝の不正会計問題【1】は、7月21日の第三者委員会の調査報告書の公表、及び田中久雄社長、佐々木則夫副会長、西田厚聰相談役といった歴代三社長の辞任などで一定の区切りをつけたかに見える。ただ、日本を代表する企業に降りかかった会計スキャンダルに、国内外は騒然となったが、今後、経済界にどのような影響をもたらすかは不明だ。
そもそも東芝による不正は、会社の利益を実際よりも良く見せるために不正な会計処理を行ったことである。発端となったのは「一部インフラ関連の工事進行基準に係る会計処理」(後述)だったが、その後3カ月に及ぶ調査により、インフラ事業以外にも、映像、パソコン、半導体事業など多方面かつ組織的に不正が行われ、7年間で合計約1500億円もの利益を実際より多く盛っていたことが明るみになった。
かつて、オリンパスやカネボウなど大手上場企業をめぐる粉飾決算や会計スキャンダルでは、東京地検特捜部が経営陣、監査法人を起訴し、刑事事件化した。だが東芝の場合、大事には至らないだろうというのが、大勢の見方だという。