――写真集だけでなく、昨今その出版が話題となっているのが、プロレスラーたちの“啓発系”の本だ。気になるその中身を、小誌で連載をしていた「プロレス読闘記」の筆者が徹底レビュー!
近年、プロレスラーによるビジネス・自己啓発本が次々と発売されていて、売り上げもなかなか好調な様子だ。以前は一晩の酒席で数百万円もの金を使い、借金上等、科学的トレーニングなんぞクソくらえ! と、とにかく破滅型の生き方が是とされ、絶対に真似しちゃいけないタブーな生き方をしてきたプロレスラーたち。そんな彼らから、一体何を学ぶべきなのか――。数あるプロレス系啓発本から、その哲学を読み解いていきたい。
SNSの被害者・長州と“性格の悪い男”から学ぶ
「Number882号 新日本プロレス、№1宣言。」(文藝春秋)
「俺はお前の噛ませ犬じゃない!」「またぐなよ、こら」「キレちゃいないよ」。
ご存じ、プロレスラー・長州力の名言である。そんな金言、至言を本人自ら解説したのが『逆境? それ、チャンスだよ』【1】だ。本書では、長州の名言47個を「○○なキミへ」という形式で読者に投げかけていて、その発言の真意とともに「信念を貫く」「苦境を跳ね返す」ためのアドバイスが語られている。長州が海千山千のプロレス界で生き延びてきた哲学を学ぶにはもってこいの1冊だ。しかも中身はちゃんと現代の世論や流行もとらえられていて、中でも筆者が好きなのは「ツイッターやFBに夢中なキミへ」贈る、「ツイッターでアレしてんじゃないよ!」の章。
そもそも長州は「全部オープンにしていると意外な部分がなくなっちゃうから、つまんない」という理由で、ツイッターなどのSNSには一切手を出していない。ところが、何年か前に長州の名をかたってツイッターをしていた輩が、いろんな有名人に噛みつく事件があったという。
この章で長州は「目立ちたいなら、自分が置かれているリアルな世界で目立った方がいい」と現代のSNS文化に一石を投じ、最後に「今度またツイッターで僕の名前をかたるヤツがいたらね、ただじゃ済まないよ」という警告のおまけ付き。なりすましを画策している人はご用心。社会的にじゃなくて、物理的に抹殺されるかもしれないよ。