田代まさし出所1周年の告白「ハイヤーパワーを感じて、ありのままの自分を認められるようになった」

――覚せい剤取締法違反を含む逮捕歴5回。2度の懲役計7年。田代まさしは、その転落人生とダルク(薬物依存症者のリハビリ施設)でのリハビリ経験を綴ったコミックエッセイ『マーシーの薬物リハビリ日記』(マンガ・北村ヂン/泰文堂)を3月に上梓した。もうすぐ2014年7月の出所から1年を迎える。

 本誌7月号の特集「グラドル&女優の生態学」における「ドキッ! 丸ごと水着! 女だらけの水泳大会」のオマージュ的扉絵にて登場していただいた田代氏。果たして現在、“回復”はしているのだろうか。そして、芸能界復帰はあるのだろうか。日刊サイゾーの独占告白“薬物依存症の田代まさし”を、やっと受け入れることができたに続き、現在の心境を聞いたサイゾーpremium特別インタビュー。

――まずは、今の生活状況について教えてください。

田代まさし(以下、田代) 日刊サイゾーのインタビューでも話しましたが、今年の初め頃から日本ダルクでスタッフとして働いています。平日は8時に起きて電車で10時に出勤。電話応対や、刑務所からダルク宛てに来た手紙の返事を書いたり、掃除をしたり、グループで薬物について話し合うリハビリプログラムにも定期的に参加しています。5時に仕事が終わったあとは、NA(ナルコティクス・アノニマス)という薬物を断つための自助グループのミーティングに可能な範囲で出席し、週末はダルク代表といっしょに全国のダルクの仲間たちや依存症者の家族会にメッセージを届けに行っています。

――週末まで働いて忙しいですね。

田代 正直、クスリを使うヒマなんてないんですよ。代表には「これ以上仕事を入れないでくださいね」とお願いしてます。でないと、疲れをとるためにまた使っちゃうから(笑)。

――では、今の息抜きは薬物……ではなくお酒ですか。

田代 ダルクではお酒は禁じられているし、もともと飲めないんだよ。中学生のときにワインを飲んだらじんましんが出て、体に向いてないこともわかってるし。当時からタバコは体に合ってたんで、今も吸ってるね。(タバコはダルクでは禁止されていない)

――ダルクに入所してまもなく1年になりますが、回復してきたという自覚はありますか。

田代 そうだね。以前は薬物のイメージを消すことが回復だと思ってた。でも本当の回復は、ありのままの自分を認めるところから始まるということがわかったんだ。ありのままの自分って無力なんですよ。そこで何に救いを求めるかというと「ハイヤーパワー」というスピリチュアルな気づき。こんなことを言うとうさん臭く聞こえるかもしれないけど、ダルクで仲間たちと過ごすうちに「もしかしてこれがハイヤーパワーかな」と思う瞬間が時々あるんだよ。

――いつからそういったものを感じるようになったんですか。

田代 ダルクに入って2カ月目、14年8月に「日本リージョナルコンベンション」という薬物依存症者が集まるイベントが東京ビッグサイトであって、全国から1500人くらい集まったんだ。そこで、クスリを止めている年月をカウントダウンしていって、自分の年になったら立ち上がるというプログラムがあったの。刑務所で強制的に止めさせられていた3年間は含めないので、俺が自ら止めていたのはたった2ヵ月間だけ。それなのにみんな拍手をしてすごく祝福してくれたんだよ。「こんな場所があったんだ」と感動して「これがハイヤーパワーなのかな」と思った。

 イベント終了後、みんなで手をつないで平安の祈りを唱えたときは、手から不思議なものが伝わってくるように感じて、「これもハイヤーパワーかもしれない」ってね。同時期にダルクでクスリの売人と出くわしたということもあって、「もしかしたらこれは偶然じゃなくて必然だったんじゃないかな」「俺が刑務所に入ったことも、ハイヤーパワーの計画だったんじゃないかな」と考えるようになったね。

 過去は変えられないけど、生き方は変えられる。俺に今できることは、クスリを止めてその姿を仲間たちに見せること。その一環として、3月に本を出したんだけど、ネットでは「マーシーがタレント活動を再開した」「印税でまたクスリを買うんだろう」なんて言われてね。“ちょっと待ってちょっと待ってお兄さん”状態だったよ(笑)。

――回復してタレント活動を再開することが最終目標ではないんですね。

田代 その考えがダメなんだよね。以前は、早く芸能界に戻って仕事をすることが罪滅ぼしになると思ってたんだけど、結果どんどん追い込まれてしまい、そのプレッシャーから逃げるためにまたクスリを使ってしまった。つんく♂が声帯摘出手術をしたとき「こんな私だからできること。こんな私にしかできないこと。そんなことをこれから考えながら生きていこうと思います」というコメントを出していたけど、まさにその通り。今の田代まさしにしかできないことがある。薬物で捕まったほかのタレントたちが過去を隠そうとするなか、薬物の恐ろしさをメディアで伝えることは俺にしかできない。過去の罪も含めて俺。置かれた場所で咲けばいいと思ってるよ。

――では、今は薬物へ走るようなプレッシャーはないということですか。

田代 ない。断言できる。ツイッターやブログには「無理やりいい話を作ってんじゃないよ」「信じてない」という批判もあるし、「私の排泄物を食べなさい」なんて誹謗中傷以下の書き込みがあって傷つくこともあるけど、それも含めて今の自分。薬物依存症者は今の自分を認めることが大切なのに、日本にはそれを許してくれる場所が少なすぎると思う。

「芸能界の外から見たら、俺、結構財産を残してきたのかなって」

――芸能界の友人とは連絡をとっていますか。

田代 とってないね。リーダー(鈴木雅之氏)からはメールが送られてくる。(ラッツ&スターの)ほかのメンバーからもね。メンバーからは「がんばれ、大丈夫、俺がついてるから」という励ましのメールがきたけど、リーダーからは「おまえの道は険しい。信用を取り戻すことは並大抵のことじゃない」というお叱りのメールが届きました。許すことも友だちだし、厳しいことを言うのも友だちだよね。

――テレビを見ていて懐かしくなることは?

田代 この間、「水曜日のダウンタウン」(TBS系)にクワマン(桑野信義)が出たときに昔の映像が流れたんだけど、俺が映ってるところだけ早回しになったの(笑)。そしたら、松ちゃん(松本人志)が「悪意あったなあ、やめたらええやん、(映像)使うの」と笑いにしてたんだ。年末の番組(TBS「クイズ☆正解は一年後」)でも「2015年に復帰しそう」ということで、有吉(弘行)が俺の名前を出したら、ほかの出演者が「じゃ」と言って清水健太郎の名前を出して。「一緒にしないで」と思ったけど(笑)、それって俺のことを排除せず笑いに変えられるようになったということだよね。

 本の出版イベントに来てくれた年配の男性からは、「『平成教育委員会』(フジテレビ)のときに『タマネギの断面図を書きなさい』という問題で田代さんは柳生博さんの頭を描いたんですよ。あれが今でも忘れられない」と言われて、俺はなんとなくしか覚えていないんだけど、彼のなかにはそのワンシーンが鮮明に息づいているんだよね。芸能界の外から見たら俺、結構財産を残してきたなと思えたよ。

――芸能界で活躍する間には、実は孤独感もあったのではないかと想像します。だから薬物に手を染めたのではないかと。

田代 ピエロは頬に涙が付いてるよね。それに近いと思うんだ。おふくろが死んだときもみんなを楽しませなきゃいけなかった。その使命感に耐えきれずクスリに逃げました……と、以前の俺だったら言い訳していたと思う。でも、ピエロとクスリは関係ない。本当は、単にクスリを打つと気持ちがいいから止められなかっただけなんだよ。それが今はわかった。だからこそクスリは危険なんだ。心が弱いから薬物依存症になるんじゃない。病気なんだよ。健康な人もかかる危険性がある病気なの。

――その病気は、“完治”はないわけですよね。

田代 完治はないけど、回復し続けることは可能。ゴールのないマラソンのようなもので、いつも俺たちは〈ing〉。以前は、記者会見でも「もう大丈夫です、二度とクスリはやりません」と言っていたけど、今は「大丈夫かどうかはお約束できませんが、とりあえず今日1日がんばります」と言うようにしているんだ。

――ダルクによって思考がかなり変わったようですね。

田代 思考そのものより、価値観が変わったね。以前の俺と今とでは幸せだと思うものがまったく違う。例えば昔は「サインしてください」と頼まれたら「いいですよ」と上から目線で返事をしていたところもあったけど、今は「こんな俺のサインをもらってくれるなんて」と心からありがたいと感じている。失敗したことによって気づかされることもあるんだよね。

――ファンの応援はどのように受け止めていますか。

田代 とっても励みになってるよ。ツイッターなんかで「もう一度、志村さんと共演してください」「マーシーさんが出ていた時代の『バカ殿様』が面白かったです」というメッセージをいただいて、胸が締めつけられるような気持ちになる。でも、またその声に応えようと焦るとダメだから、焦らず先のことは考えないようにしてる。ただ、これだけは「絶対」と思っていることがある。もう一度、鈴木雅之の横に立ってラッツ&スターのメンバーと歌を届けたい。おじいちゃんになってからでもいいから、それだけは譲れないんだ。

 最近さ、俺ね、元の姿に戻ってきているのか、通勤電車とかで人に気づかれることが増えてきたんだよね。この前、目の前にいた会社員が俺の顔を見て、iPhoneで画像検索し出したの。で、よりによって逮捕されたときの画像を出して見比べて首かしげてて。あんときの俺と今の俺、全然違うからね!

(文/安楽由紀子)

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