1938年2月16日に刊行された「写真週報」創刊号。表紙写真を撮影したのは木村伊兵衛。(すべて個人蔵)
1938年2月16日、「カメラを通じて国策をわかりやすく国民に伝える」ために内閣情報部によって週刊グラフ誌「写真週報」が創刊された。創刊号では「官庁も民間も、作家団体も個人の工房もあらゆるものが総動員されて、カメラに依りレンズを通じて対外、対内の啓発宣伝に資し写真報国の実」を挙げようと謳われている。表紙は高千穂峰を背に「愛国行進曲」を歌う子どもたちの写真で、撮影は木村伊兵衛。
「愛国行進曲」は、37年に内閣情報部が「国民が永遠に愛唱すべき国民歌」として公募した官製ヒットソングで、「写真週報」でも同様に「読者のカメラ」というコーナーなどを通じて写真の懸賞募集が行われた。この年に内閣情報部が立案した写真報道事業には、民間から対外宣伝用の写真を秘密裏に収集するという目的があり、「写真週報」創刊もその延長線上にあった。つまり、対外宣伝用の写真や資材が不足する中、全国各地のアマチュア写真家たちを「写真報国」へと導かねばならなかったのである。