『知っておきたい日本の皇室』(角川ソフィア文庫)
――天皇陛下のお顔を見ると目がつぶれる」などといわれたのも過去のこと。時代が昭和から平成に移り、現在の佳子さまフィーバーに代表されるように、皇室はメディアを通して「見る」対象となりつつある。天皇陛下自らも「開かれた皇室」ということを話しているが、その言葉に便乗するかのように週刊誌や女性誌で盛んに取り上げられ、一大人気コンテンツの様相を呈している。現代において天皇は、私たち日本人にとって絶対的で象徴的なものであるよりも、「親しみの持てる存在」となりつつあるのだが、果たして本当にそれで良いのだろうか?佳子さまフィーバーに浮かれ、本当に議論すべき問題をすっかり忘れてしまってはいないだろうか?
こちらで、日常的に天皇をどう考えればいいか、について話を聞いた新右翼団体「一水会」の元代表の鈴木邦男氏は、天皇をめぐる議論の対立関係にも変化が起こっているという。かつては左翼vs右翼、つまり天皇反対派と擁護派の対立が大半だったが、現在はほぼ右翼vs右翼という構図になっているという。思想的には同じところに帰するはずの擁護派の中で「平和憲法を守るという天皇を認める/許せない」「女性天皇賛成/反対」などと対立している不思議な状況だ。
本年は、終戦から70年を迎える記念すべき年である。今こそ基本に立ち返り、右や左といった思想に偏らないフラットな視点から、天皇や皇室について考えてみるよい機会ではないだろうか。それこそ天皇を象徴する「菊花紋章」とは何か? から。