写真壁画とは、文字通り壁画のように大きく引き伸ばされた写真のことである。引き伸ばした複数の印画紙を張り合わせてさらに大きくしたもので、1920年代頃から商業施設のディスプレイやビルの装飾などで利用され始め、30年代から40年代にかけては万国博覧会という檜舞台の常連となった。
写真壁画の中で比較的よく知られているのは、37年のパリ万博に出品された「日本観光写真壁画」だろう。日本各地の観光地をモンタージュした絵巻形式の壁画で、写真家の木村伊兵衛や渡辺義雄らの写真をもとにデザイナーの原弘が構成した。万博への出品物は従来工業製品や工芸品、美術品のような輸出振興につながるようなモノの展示が多かったが、写真壁画は日本へのポジティヴなイメージを観客に伝えるためのスペクタクルであった。