――情報環境としてのテレビの在り方が旧来と変化しつつある今、「非東京圏のバラエティ番組が面白い」と耳にする機会が増えた。法的にはグレーゾーンなやり方も含めれば、放送圏外での視聴も可能になっている。なぜ今、非東京圏のバラエティ番組があらためて面白いといわれるようになってきたのか? キー局との関係性の変化、出演するタレント側の思惑、あるいは金事情など、さまざまな側面からこの現象を紐解いてみたい。
東京芸人が大阪ローカルに回帰するきっかけにもなった『ごぶごぶ』(MBS)。今は東野からロンブー淳に。
浜田雅功と田村淳が関西の街を歩きながら地元住民と触れ合う『ごぶごぶ』(MBS)、岡村隆史と大阪で絶大な人気を誇る女芸人なるみによる『なるみ・岡村の過ぎるTV』(ABC)など、近年、超大物芸人たちが出演するローカルバラエティ番組が急増している。関西地区や中京地区など、一部のローカル局でしかオンエアされていない番組だが、『ごぶごぶ』のようにDVDが全国発売されたり、『過ぎるTV』のように深夜帯にもかかわらず10%を超える視聴率を獲得したり、あるいはインターネットを通じて拡散されるなど、東京に住んでいても、その話題を聞くことは少なくない。どうやら、東京キー局に一極集中だったバラエティ番組の制作に、「地方分権」の波が押し寄せているようだ。
ではなぜ、大物芸人たちはローカル番組へと流れていくのだろうか? この流れを掘り下げていくと、テレビを取り巻く状況の変化が見えてきた。
基本的にバラエティ番組は、キー局が東京で制作し、全国のローカル局に同じコンテンツが流れるという全国ネットが一般的となる。全国ネットの放送であれば、視聴世帯数が増加し、キー局は企業に番組のCM枠を高値で売ることができる。そして、そこで得た広告費は、「ネットワーク費」を支払うという形でローカル局に流れていく仕組みなのだ。その規模は、ローカル局1社当たり年間10億円余りといわれている。何もしなくても金が舞い込んでくるため、ローカル局で、わざわざオリジナルの番組を作ろうという気概は生まれず、『探偵!ナイトスクープ』(ABC)や『水曜どうでしょう』(HTB)など一部の例外を除き、ほとんど全国区で話題となる番組は生まれてこなかった。