『問題のあるレストラン』『最高の離婚』から2年、脚本家・坂元裕二がたどり着いた“社会派”作品の新たな描き方

批評家・宇野常寛が主宰するインディーズ・カルチャー誌「PLANETS」とサイゾーによる、カルチャー批評対談──。

宇野常寛[批評家]×成馬零一[テレビドラマ評論家]

『Mother』『それでも、生きてゆく』『最高の離婚』『Woman』と、ここ数年話題作を生み続けてきた脚本家が、14年冬クールに描いたテーマは現代日本のジェンダー問題だった。脂の乗った作家が見せた、到達点にして新境地とは──。

問題のあるレストラン 1(河出文庫)

成馬 今期のドラマは豊作でしたけど、『問題のあるレストラン』は群を抜いて面白かった。脚本は坂元裕二さんで、彼がこれまで積み重ねてきた総合力で勝った、という感じがしました。セクハラや男女の働き方といった、ジェンダー問題が中心のハードなテーマなので、テーマにドラマが負けてしまうかな、と最初は思ったんです。でもフタを開けてみたら、テレビドラマとしてちゃんと面白かった。

 放映当初、ネット上では批判も結構あったんですよ。「男性の描写がキツすぎる」とか、逆にフェミニズム的な意識がある人からは「描写が甘い」というダメ出しだとか。確かに最初は、男は内面がない人のように描かれていたところがあった。だから、男が圧倒的に悪くて、セクハラ被害者やシングルマザーといった、女性差別に傷ついた人たちがチームを組んでレストランを作って戦っていく、みたいな内容になるのかと思っていたら、どんどん話が展開していく。今までのドラマだと、女性たちがレストランを作って癒されて終わり、という話になっていたと思うんです。でもそうはならなくて、前半で受けた批判を、後半にいくにつれてドラマが打ち返して盛り上げていった。

宇野 僕も最初は「カリカチュアライズしすぎじゃないか」と思ったけれど、まったくの杞憂だったね。最初はわかりやすい極端な例を出して視聴者を引き込むんだけど、そのわかりやすさにあぐらをかいて安直な描写に走るのではなく、そこから細かい人物描写や背景をフォローしていく構図になっていて、実によく考えられていた。だから、このドラマに対してジェンダー的な観点から批判しているのは、ちゃんと観ていない人が多かったんじゃないかというのが単純な感想です。

 坂元裕二という作家は基本的に、耳目を集める現代的な社会問題を扱って、それによって発生するユニークな状況や奇妙な人間関係を使って芝居のニュアンスや人間関係の面白さを見せていくのだけど、今回の『問題のあるレストラン』ではそういう社会的なテーマを、作者にとって面白い状況設定を生むための道具に使っているのではなくて、最初から最後までメッセージ性で強烈に貫くということを本気でやっていた。だから結果的に、裁判をやって相手のレストランを潰すという、ある種のちょっとした後味の悪さにまでつながる結末になっていたと思う。

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2024.11.22 UP DATE

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