――3月に発表された木村伊兵衛賞の受賞者は2名。『明星』(ナナロク社)の川島小鳥と、『絶景のポリフォニー』『okinawan portraits 2010-2012』(共に赤々舎)の2作で受賞した石川竜一である。本誌は、パリに滞在中の石川を直撃。受賞後の思いを聞いた。
『絶景のポリフォニー』(赤々舎)からの1カット。
木村賞のことは、ほとんど意識してなかったというか、まさか自分がとるとは思ってなかったです。そもそも写真賞というものに関心がなかったというか、むしろあまり良い印象は持ってなかった。というのも、僕は写真をどこかで専門的に勉強したとかではなくて、大学生の頃にたまたま写真に出会って、就職もしたくないから、その延長でそのまま写真を撮り続けてきただけなんですよね。だから、「僕のことは放っておいてくれ」みたいなところもあった。
僕が撮っている物とか人も、同じようなところがあるかもしれないです。僕の写真の被写体は、普通にサラリーマンをやっているような人たちではないですから。沖縄のちょっとアウトローな人たちと一緒に過ごしながら、そういう人たちの写真を撮ってきて……だから、今回の賞の話をいただいたとき、実はちょっと悩んだんです。そういう環境でやってきたにもかかわらず、自分だけ社会的な評価を与えられてしまうのはどうなのかなって。それで周りの人たち、僕の被写体になってくれている人に相談してみたら、「おめでとう!」「やったね!」って、こっちが思っていた以上に素直に喜んでくれて……その言葉を聞いて、やっぱりこの賞はもらったほうがいいんだなって思ったんです。この賞をもらうことは、自分みたいな人間が表に出るきっかけになるんじゃないかって。そういう考え方もできると思うんですよね。