【安達祐実】「家なき子」で忙殺されていた頃、さだまさしさんを聴いて殻に閉じこもってました。

(写真/三浦太輔(go relax E more))

Touching song

さだまさし
『防人の詩』
1980年7月に発表されたさだまさしのシングル曲。映画『二百三高地』の主題歌にもなり、すべてのものがいつかは死にゆくことの無常を歌う。

 音楽に関しては、やっぱり親の影響がいちばん大きいかもしれないですね。母が大ファンだったので、ユーミンさんの音楽は私も物心つく前から聴いていて、いまだにすごい好きですね。あと、昔のフォークソングなんかも、よくカラオケで母が歌っていたのでたくさん知っているし……そう、思い出した!中学生の頃にさだまさしさんの歌をすごい好きになるんです(笑)。さださんは親も聴いてなかったから、多分自分の意思で聴き始めて……いちばん最初に聴いたのは、テレビで観た「防人の詩」だったかな? 〈海は死にますか/山は死にますか〉っていう、有名なあの曲ですね。それを聴いたときに、「なんだこの業の深い曲は!」って、すごい驚いたんです。それからさださんのアルバムを買い集めて……歌詞に物語性があるところがいいんですよね。さださんの曲って、歌詞の背後にドラマが見えるじゃないですか? すごく悲しげなものの中に、ちょっとコミカルな部分があったり……そういうところがよかったのかな。

 周りの中学生は多分誰も聴いてなかったと思いますけど……私は、可愛くてハッピーなものとかにあまり興味を持てなかったんですよね。悲しいことや苦しいことのほうが大事というか、うれしいとか楽しいを表現するには、絶対に悲しみがないとダメだって思っていたんです。だから、音楽にしても映画にしても、どこか悲しげなものが昔から好きで……楽しいものでも、どこかに哀愁が漂っていないとダメなんですよね(笑)。

 さださんを聴いていた中学生の頃──ちょうどドラマ『家なき子』をやっていた頃は、とにかく忙しかったし周りも騒がしかったから、ひとりで静かにしていられるような時間がほとんどなかったんです。そういう中で何かひとつ殻に閉じこもれる時間が欲しかったというか……そう、同世代の子と話す機会もほとんどなかったから、何がはやっているかってことなんかもまったく知らなかったんです。多分、テレビを観ている時間もほとんどなかったんじゃないかな?そういう中で唯一、移動中とかでも聴けるのが音楽だったんです。だから、あんまり深く掘り下げたり、誰かの熱烈なファンになって追っかけたりはしなかったけど、気がつけばいつも自分のそばにあるもの。私にとって音楽とは、そういう感じのものなんですよね。

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