ジャニーズ副社長が公にしたSMAPへの苦言と芸能界への余波

――数々の芸能スクープをモノにしてきた芸能評論家・二田一比古が、芸能ゴシップの“今昔物語”を語り尽くす!

『Eye-Ai [Japan] Dec 2014』(リバーフィールド社) 

「男性アイドル帝国」と評されるジャニーズ事務所の女帝・メリー喜多川副社長が「週刊文春」(1月29日号)のインタビューに答えた話が業界にも大きな波紋を広げている。

「年齢は非公開ですが、弟のジャニー喜多川社長が83歳であるからしてすでに80代半ばだと思われるが、カリスマ社長の女帝ぶりが紙面からも伝わってくる。我々同業者もそうめったに会うことはありませんが、まだまだ衰えはないと痛感しました」と某芸能プロ幹部。同氏によると、30年ぶりにインタビューに答えた内容も納得いくものが多かったという。

「特に後継者問題。すでに事務所の幹部として帝王学を学ばせていた娘のジュリーに継がせる話も至極、納得のいくもの。他の事務所も経営はすでに二世に継がせていることもあり、娘に継がせるのは自然の流れ。周囲が勝手に詮索していただけのことでした。ここで後継者が娘と断言したわけですから、業界も今後のジャニーズとの付き合い方に変化が出るかもしれません。芸能プロ経営者としては正しい考え方の面もあり、勉強になりました」

 しかし、思わず苦笑する発言もあった。"嵐"と"SMAP"が共演しないことについて聞かれたメリー氏は、「だってSMAPは踊れないじゃないですか」と言い切った。

「自分のところの所属タレントを公に"踊れない"と言い切る幹部はあまり聞きません。楽屋話では所属タレントのことを下手だという人はいますが、公に言ったということは、業界やファンに対して公示したに等しい。それはSMAPのメンバーに対してもある種、屈辱的な言葉ではないでしょうか」(テレビ関係者)

 ジャニーズ事務所は踊って歌える男性グループとして誕生した。それは「男版・宝塚」とも称された。音楽関係者が話す。

「ジャニーズの夢は東京でブロードウェイのようなミュージカルを所属タレントで実現させ、世界の名所にすることと聞きます。そのためにはメンバーは踊って歌えることが欠かせなくなる。ただ、踊りに"上手い・下手"が出てきてしまうのは仕方ないこと。では、下手な子はどうするかといえば、SMAPのように芝居や司会に転身させて、別の才能を見出し、生かすことができる。これがジャニーズの強みでしょう」

 アイドルとは芸能界における「企画者」と呼ばれる。事務所の企画で誕生し、そのままスターの座に付く。かつてアイドル経験のある男性がこう話をしていた。

「事務所やプロデューサーに言われるままに歌って踊る。衣装も仕事もすべてお任せ。そこに僕の意志はまったくない。言い方を変えればロボットみたいなもの。結果、アイドルを辞めた後、どうしていいのかわからなくなる。自分で自分をプロデュースする能力もないし、芸能界でどうすれば生き残れるかわからない。アイドルしている時はなにも考えず夢中でしたが、止めた途端、なにをしていいか途方にくれました」

 実際、元アイドルは苦しんでいるケースを多く見る。田原俊彦、諸星克己、さらには川崎麻世、大沢樹生、布川敏和など。

「アイドルを続けるには無理がある年齢ですし、といっても芝居や歌が飛び抜けてうまいわけではない。彼らは芸能界に方向性を見いだせないままここまできてしまった感がある。今、女性アイドルは結婚と言う形で一時的に引退し、"ママタレ"という形で戻ることができますが、男性は一生の仕事。同じように引退するわけにはいかない。いち早く、役者業に転身した本木雅弘や司会になった薬丸裕英はアイドルを脱出して成功している。彼らは自分の機転だけでなく、サポートする人に恵まれたんだと思いますが、アイドルは一生続けることが難しいことを証明しています。歌手や役者を目指して芸能界に入ってきた人とアイドルは根本的に違います。アイドルを辞めたら、歌も踊りも極めたものがないということになりがちです」(芸能関係者)

 今回のメリー氏の発言。現役所属タレントがどう感じとっているかも興味深いところだが、「メリーさんの発言は改めてジャニーズ事務所の力を示したことにもなる。現段階でうかつに独立などとてもできないでしょう。ただ、完全に娘さんに権力が移行した後も、そのままかというと、どこの事務所もおなじですが、創業者だから付いていったけど、二代目は別という考えが出る可能性もある」

 最近ではジャニー社長のお得意フレーズ「ユー」をタレントがネタにする風潮があるが、メリー副社長の発言はそう気軽にネタにはできない。むしろ、真剣に将来を考える指針になったかもしれない。

 それほどタレントにとっても重い言葉が並んでいる。

ふただ・かずひこ
芸能ジャーナリスト。テレビなどでコメンテーターとして活躍するかたわら、安室奈美恵の母親が娘・奈美恵の生い立ちを綴った「約束」(扶桑社刊)、赤塚不二夫氏の単行本の出版プロデュースなども手がける。青山学院大学法学部卒業後、男性週刊誌を経て、女性誌「微笑」(祥伝社/廃刊)、写真誌「Emma」(文藝春秋/廃刊)の専属スタッフを経て、フリーとして独立。週刊誌やスポーツ新聞などで幅広く活躍する。現在は『おはようコールABC』(朝日放送)、『今日感テレビ』(RKB毎日放送)などにコメンテーターとして出演

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