――数々の芸能スクープをモノにしてきた芸能評論家・二田一比古が、芸能ゴシップの“今昔物語”を語り尽くす!
『まんが有名人あの人は今!実録消息不明スター大捜査SP』(コアマガジン)
お盆やお正月に週刊誌に登場するのが「あの人は今」なる企画。今やお馴染、雑誌やテレビ番組にとっては風物詩といっても過言ではない。
「2週間のあいだ書店に置かれる週刊誌の合併号は日々のニュースだと古くなってしまう。そのため、じっくり家で読むものとして、懐かしい芸能人の話は欠かせない。日頃、テレビや映画で活躍している人ではなく、“そういえば、あの歌手、最近見なくなったけど、どうしたのだろうか”といった人を探して近況を伝える企画ですが、高齢化の世の中ならではの好評な恒例企画です」(某女性誌編集者)
年代によって懐かしく思う芸能人の違いはあれ、一世を風靡した芸能人になれば、誰もが関心を持つ。確かに「面白い」と感じる人は多いが、取材する側はなかなかに大変だ。
「まだ芸能プロに所属して細々でも芸能活動をしている人ならコンタクトも取りやすいのですが、今、所属している事務所もわからず、居場所もわからない。活動状況もわからない人もいたりする。こうなるとほとんど探偵屋みたいなもので、探すことから始まる。これだけで時間を要する場合もある。仮にコンタクトが取れても“そんな企画には応じられない”と断られるケースも少なくない」(前出)
断る理由は単純明快。芸能関係者の話。
「芸能人のプライドですよ。「あの人は今」企画に出ることは、売れていないことを証明するようなもの。実際、売れていないのは事実でも、それを認めたくない。もっとも、テレビに出ていないだけで、地方回りをしていればそれなりに稼いでいる人は結構います」
一時は、「あの人は今」企画を拒絶する人が多かったが、最近は快く取材に応じる人も増えてきている。ベテラン編集者がいう。
「今は売れてなくても、一時期、売れていたことは事実。今は復活ブームに乗りテレビ以外で活動している人は少なくない。週刊誌に取り上げてもらいたくても載せてくれないのに、向こうから記事にしてくれることはありがたいこと。そう考える傾向が強くなった。例えば、往年の歌手が“同窓会コンサート”という形でコンサートをしている人たちにとってはいい宣伝になる。宣伝ついでにリップサービスをする。過去の恋愛話とか、“あの子とあの人が付き合っていた”といった話もすでに時効として話すようになった。話だけでインパクトが弱いと、大場久美子のようにセミヌードまで披露して取り上げてもらう。芸能界も温故知新のような時代にきている」(ベテラン編集者)
著者もかつて売れていた歌手と飲むことがある。「今じゃ、電車に乗っても誰も気づかれないからいつも利用しています。昔は飲みに行くのでも運転手付きのベンツだったけど、電車がこんなに便利なものだと初めて知った」という。
とはいえ、どこからどう見てもサラリーマンには見えない。といって「ヤクザ」にも見えない。「何者なのだろう」と飲み屋では違和感を持たれて見られる。稼いでいた時の名残のように、金のロレックスなどブランド物の装飾品は、女の子たちから羨望の眼差しを向けられることもしばしばだ。
「なにしている人ですか」と必ず聞かれる。ここで「歌手」を隠す人は少ない。最終的には「昔、歌手だったのだよ。ママに聞いてごらん」と返す。
「完全に芸能界を引退しているならともかく、地方回りとはいえ、細々と活動している以上、若い子にも恥を忍んで言うほうが少なからずメリットはあるし、隠さないことが芸能人としてのプライドですね」という。さらにこんな話も。
「キャバクラなんかに行けば自分の娘よりも若い子が相手でしょう。それでも芸能界にいることで、還暦近い年になってもモテたりする。芸能界に席を置いていることで関心を持たれるし、アフターで歌でも歌えば、素人よりは絶対にうまい。今でもモテますね。おかげでいい思いをしたこともあるようです」(前出・編集者)
夜の街では「俳優よりも歌手のほうがモテる」と言われている。「俳優はその場で演技するわけにはいかないけど、歌手は即興で歌える。売れていた頃はカラオケで歌うことはなかったけど、今は有名ではないから、自由に歌える。歌の合間に芸能界の裏話をリップサービスしてやればいい。気取る必要がないから、下ネタも話せる。芸能界の一線を外れると変な規制がないのがラク」(同)と明かす。
今、活躍している若手もいずれは「あの人は今」になる。その「あの人は今」の現役たちは、仕事をしながら老後を謳歌している。
芸能界も、高齢化が確実に進んでいるのだ。
ふただ・かずひこ
芸能ジャーナリスト。テレビなどでコメンテーターとして活躍するかたわら、安室奈美恵の母親が娘・奈美恵の生い立ちを綴った「約束」(扶桑社刊)、赤塚不二夫氏の単行本の出版プロデュースなども手がける。青山学院大学法学部卒業後、男性週刊誌を経て、女性誌「微笑」(祥伝社/廃刊)、写真誌「Emma」(文藝春秋/廃刊)の専属スタッフを経て、フリーとして独立。週刊誌やスポーツ新聞などで幅広く活躍する。現在は『おはようコールABC』(朝日放送)、『今日感テレビ』(RKB毎日放送)などにコメンテーターとして出演。