――本誌では初となる「東京特集」だが、「いま”旬”な東京スポット」を取り上げる、カルチャー誌や情報誌の特集は定番だ。そこで、今年に発行された「東京」特集を徹底比較。いま盛り上がっている”東京”はどこなのか、各誌の企画力をレビューしてみたい。
東京特集は情報誌の定番。とはいえ「東京」とひとくくりにしてしまうと範囲が広すぎるのか、情報誌の場合は都内のエリアを限定した特集が多く見受けられる。一方、「東京」全体をテーマにした特集を組むのは、カルチャー誌やファッション誌など、流行に敏感な読者が手に取るアーバンな”オサレ”(≒オシャレ)雑誌だ。今年は、「BRUTUS」「POPEYE」「& Premium」(すべてマガジンハウス)、「Pen」(CCCメディアハウス)、「散歩の達人」(交通新聞社)の5誌が「東京」特集を組んでいる。同じテーマとはいえ、雑誌のカラーによって紹介されている店やスポット、見せ方は当然異なる。
まず注目したいのは、東京特集が発売された時期が春に集中している点だ。「BRUTUS」と「POPEYE」は読者ターゲットが異なるとはいえ、同じ版元にもかかわらず共に4月に東京特集号を発売している。似たような特集号を同時期に発売しても売り上げにつながらないのでは? と思うが、読者層が異なるゆえ、心配はなさそう。時期が重なったのはおそらく、春は新生活スタートのシーズンであり、ニューオープンの店が多かったことや、昨年の9月に東京五輪の開催が決定したことが影響していそうだ。
では、各誌の売れ方はどうだろう。ライバル関係(であろう)「BRUTUS」と「Pen」は、大型書店での売り上げデータを見てみると、前者は新宿や渋谷、吉祥寺など都内での消化率が高いのに対し、後者は金沢や徳島など、地方店舗での消化率のほうが高い。5誌の中で最もオサレ度が高い「POPEYE」と「& Premium」は地方での消化率がサッパリだが、渋谷や新宿など都心での売り上げが好調だ。データで見るに”東京特集”に敏感そうなのは、さいたまや浦和、相模原、北千住などの都心に近い地域。紹介されている店やスポットに気軽に行ける距離ではあるものの、東京への憧れもあるという首都圏郊外住人にとっては、うれしい特集なのかもしれない。
上の表では、今回比較した5誌の東京特集を細かく分析してみた。いろんな意味で最も”ナウ”で”オサレ”な東京を紹介しているのはどの雑誌なのか、皆さんの目でも確かめてみてほしい。
■「シティボーイ」に絞った見事な構成
「POPEYE」
14年5月号 発行元/マガジンハウス 発売/毎月10日 創刊/76年6月 価格/760円(税込) ※発行部数(12年10月1日~13年9月30日JMPA調べ)/8万4750部
(特集内訳)
「東京’14」
(全139ページ)
● グルメ:約22ページ
● ファッション:約95ページ
● カルチャー:約22ページ
(総評)
“THE オサレな東京特集”という感じ。あくまでも“シティボーイ”目線での東京が紹介されており、そのブレのなさには好感が持てる。メイン企画「東京シティボーイ事典」では、五十音順にセレクトされたお店やキーワードを掲載。スケートパーク、立ち飲み屋から職人仕事の店まで幅広い。グルメページではこれでもかというほど生肉などの食べもの写真が大きく載っており、男らしさをアピール。特集の半分以上をファショングラビアに割いているあたりには、雑誌の個性を感じる。だが5誌の中で一番重量があり、なにしろシティボーイのための東京特集なので、その実用性は疑わしいところ。
シャレオツ度:★★★★★
ミーハー度:★★★☆☆
実用性:★★☆☆☆