誤報と御嶽山噴火でひっ迫する新聞各社の悲しきフトコロ事情

朝日批判にうつつを抜かしていいのか?

従軍慰安婦問題、そして吉田調書問題で、内外からの信頼は完全に地に堕ちたかに見える朝日新聞。しかし、その朝日に対して批判キャンペーンを繰り広げるばかりの大手新聞各紙に対しても、”共倒れ”の危険性を指摘する声は多く……。はてさて、どうするどうなる新聞業界!?
御嶽山 静かなる活火山(信濃毎日新聞社)

【座談会参加者】
A:経済誌中堅記者
B:全国紙社会部若手記者
C:全国紙社会部デスク
D:政治部中堅記者

A 前号のサイゾーでも触れたけど、この夏から秋にかけて、相変わらずマスコミ業界では朝日新聞の誤報問題が盛り上がりを見せましたね。

B そうだね。朝日は8月5日付朝刊で、韓国で女性を強制連行したとの証言をした吉田清治氏による「吉田証言」を虚偽だと判断して記事を取り消した。さらに、9月11日には木村伊量社長が記者会見を開いて、5月20日付朝刊1面トップで報じられた、東京電力福島第1原発の吉田昌郎・元所長の「吉田調書」を独自入手して「所長命令に違反 原発撤退」としたスクープ記事のほうも、誤りを認めて撤回した。この「ダブル吉田問題」を契機に、読売・産経といったライバル紙をはじめとして、「週刊文春」「週刊新潮」といった週刊誌までも、せきを切ったかのように朝日への批判【1】を強めている。

A ちなみに朝日社内では、木村社長の会見を「9・11同時多発謝罪」なんて言う人間もいるとか(笑)。東京本社内のあまり広くないホールで開かれた会見は、「会場の都合」として出席できる記者の人数を厳しく制限して顰蹙を買ってました。

B 同じ業界の人間として、耳の痛い話です(苦笑)。

C 長らく新聞業界では「ライバル紙への攻撃はご法度」とされてきた。特に朝日は業界内でも自他共に認める"クオリティーペーパー"【2】だから、批判も避けられることが多かったしねえ。

D だからこそ、今回の朝日の「ダブル吉田問題」に関する報道はことさらひどく感じられたよね。特に吉田調書は、実際に公開されたものを読んでみれば朝日のような報じ方にはならないと誰でも思うはずで、やはり「脱原発」の社論に引きずられた、結論ありきの記事だったということでしょう。産経が吉田調書を入手して8月18日付朝刊1面で「『全面撤退』明確に否定」とのスクープ記事を打ち返したけど、産経が親・安倍政権だからって、「安倍政権の朝日新聞叩き」なんて一部の週刊誌や海外メディアが攻撃したのには違和感があったな。安倍政権がこの流れを利用している側面はあるだろうけど、やはり朝日の報道自体は責められても仕方がない内容だったと思うよ。

A 産経は慰安婦問題でも朝日批判を続けてきたから、今回の問題で”全面勝利”ということになるんだろうけど、かといって販売面での目立った効果はないようですね。むしろ、産経と同じく保守路線の読売が、慰安婦報道における自社の正しさなどを誇るビラを朝日の購読者宅にも配布するなど、猛烈な販売攻勢を仕掛けているとか。

C 産経の一連の朝日批判報道で中心的な役割を担った阿比留瑠比・政治部編集委員なんて、「週刊文春」で「反権力ではなく反安倍に過ぎない」とまで朝日を揶揄する記事を書いてはいたけど、結局のところ産経は資金面では劣るから、読売みたいな販売攻勢なんてとても仕掛けられないというのが実情だろうね。やはり、オイシイところは読売が持っていってしまう(笑)。

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