――2007年に休刊した人気プロレス専門誌「週刊ゴング」が、このたび復刊した。プロレスブーム再燃の様子は、こうした各メディアにもはっきりと表れているようで……その変遷を追った。
「ゴング」にかける熱い想いを語ってくれた金澤氏。復活するGKがどんなプロレスメディアを世に放つのか、楽しみだ。
2006年に「週刊ファイト」(新大阪新聞社)、その翌年には「週刊ゴング」(日本スポーツ出版社)といった専門雑誌の休刊が相次ぎ、受難の時代を迎えたプロレスメディア。その後、スポーツ新聞での扱いも年々少なくなるなど、苦境を呈していたが、12年頃から、メディアを含むプロレス業界全体が、にわかに活況を取り戻してきている。
その、最新トピックとなるのが「ゴング」復刊(9月9日に発売)のニュースだろう。不況にあえぐ現在の出版業界において、休刊していた雑誌が復刊することは、プロレス専門誌に限らず奇跡的なこと。そんな新生「ゴング」(徳間書店)の編集長であり、元「週刊ゴング」編集長でもあるGK(ゴング金澤)こと金澤克彦氏に、その復刊に至る経緯を聞いた。
「復刊の話は、『ゴング』休刊時の版元の社長で、商標権を持っていた前田(大作)氏がいろんな関係者に『ゴングをまたやらないか?』と声をかけまくっていたことが発端でした【註:その後前田氏は、社長を兼任していたコンピューター周辺機器製造「アドテックス」をめぐる民事再生法違反事件にて逮捕された】。彼は当時、人を介して僕にも接触してきたんですが、まったく信用のできない人だったので断っていたんです。そんな中、『KAMINOGE』(東邦出版)の編集長・井上(崇宏)君にもその話がきたそうで。結局それもとん挫したものの、2年ほど前に『ゴングの版権を前田氏が更新していない』という情報を某出版社の知人から聞かされまして。その話を井上君に伝えたところ、『ゴングの権利を正当な手段で取れたら、金澤さん、絶対編集長をやってくださいよ!』と言って、彼が1年くらい前からいろいろな出版社に働きかけてくれたんです。『井上君がそう言うなら』と、実現に至りました」
復刊の一報が流れた際、金澤氏のもとには親交のあるプロレスラーからも好意的な反響が多くあったという。しかしその一方で、マスコミ関係者には懐疑的な見方をしている者も少なくない。
「マスコミの人たちは、"難しいだろう"という反応ですよ。あえて触れないで様子を見ているようで(笑)」(金澤氏)
某出版社でプロレス関連書籍などを手がけるA氏も、その"様子見"をしているマスコミ関係者のひとりだ。
「現在のプロレスブームというのは、昔テレビのゴールデンタイムで試合を見ていた中年層が懐かしんで戻ってきていたり、武藤敬司の『プロレスLOVEポーズ』を振り付けに盛り込むなど、プロレスとかかわりの多いももいろクローバーZの影響を受けるなどして参入してきた新規ファンに支えられている印象があります。実際、某週刊誌で、40〜50代の"昔なんとなく見ていた"というライト層向けの王道なプロレス連載がスタートしたんですが、こちらが年間で数万部もの売り上げアップにつながっているのに対し、僕が作ったマニア向けのプロレス関連本は、まったく影響を受けていない状況ですから(泣)。
『ゴング』って、もともとマニアックなデータを用いてとことん解析していくようなオタク系のプロレス雑誌なんですよね。なので、現在のファンの流れを考えると、『ゴング』が『ゴング』として復刊するなら、厳しい気がしますが……」
もちろん、金澤氏もそのファン層の変化については感じ取っているという。
「時代ごとにファン層が変わるのは当然のこと。今のファン、特に増加している女の子のファンたちは、選手のルックスから入る傾向が強かったりしますしね。女性人気を集めているオカダ・カズチカなんか、いい例ではないでしょうか。
そもそも、最近の若いファンて、僕のことを"GK"ではなく"『中西ランド』【註:新日本プロレス所属のレスラー・中西学によるプロレスバラエティ動画】の金澤さん"という認識で見ているんですよね(苦笑)。ここ5年くらいで、ファン層がすっかり変わったなあ……と実感しています」(金澤氏)
休刊から7年。様変わりしたファンに向けて、新生「ゴング」は今後どんな誌面を作っていくのか。