"セコンド萌え"に"やられ萌え"プロレス人気を盛り上げる女子たちの本音

――女子ファンの流入がプロレス人気復活を下支えしている、というのは前記事のみならず、各種メディアでも指摘されていることだ。それでは、実際に近年プロレスにのめり込んだ女子たちは、一体何に惹かれているのか? 現役プロレス女性キャスター・三田佐代子氏を司会役に、そのポイントを探ってみた。

[座談会参加者]

三田佐代子
古舘プロジェクト所属のフリーアナ。96年より、スカパー!・プロレス格闘技専門チャンネル「FIGHTING TV サムライ」にてキャスターとして活躍。東京スポーツ主催「プロレス大賞」選考委員も務める。

蟹めんま
マンガ家。ヴィジュアル系にハマった10代から現在に至るまでのバンギャルライフを綴った『バンギャルちゃんの日常』(エンターブレイン)が3巻まで刊行中。

キョコリーナ
コスプレイヤー。中邑真輔コスチュームに身を包んだ悪魔将軍のマスクを自作して観戦に行く中邑推し。

松本真紀子
都内で働く企画職OL。同じく中邑推し。

お集まりいただいた座談会参加者の方々。ちなみに、後ろの画面(下)で流れているのはDVD『矢野通プロデュース Y・T・R的修学旅行』の入浴場面。

三田佐代子(以下、三田) 皆さんは、それぞれどういった経緯でプロレスにハマられたんですか?

松本真紀子(以下、松本真紀子) 私は最初は10年くらい前にスカパー!でやっていたWWE【1】を観てハマりました。でも格闘技には馴染みがなかったんで、どちらかというと『テラスハウス』的な楽しみ方をしていました。その後しばらく間を置いて、今は中邑真輔選手【2】のファンです。

三田 WWEのバックステージは、完全にリアリティーショーですからね。

蟹めんま(以下、めんま) 私は本格的にハマったのは、今春の井上亘選手【3】引退興行がきっかけです。身体を悪くしての引退だったので試合はされてないんですが、最後の挨拶で「皆さんに伝えたいことがあります。自分の好きな選手に、思いっきり声援を送ってあげてください。きっと、その声援は選手に届いて、もっともっと素晴らしいプロレスをしてくれると思います」って言ってたんですね。それを聞いて「なんてアツいスポーツだ!」と感動して。自分も声援を送りたいと思うようになりました。その後、たまたまDDTが出しているマンションプロレス【4】のDVDを観る機会があって、やたらイケメンのレスラーがいる! と、飯伏幸太選手【5】のファンになりました。

キョコリーナ 私は子どもの頃、親がテレビでプロレスを観ていて、自分も大人になっても流し見はしていたんですが、04年の中邑選手と高山善廣選手【6】の試合で中邑がボッコボコにされてるのを観て「もう死んじゃう! やめて!」と思って……それから完全に好きになりました。

三田 それは中邑選手ファンとしては先見の明がありますよ。でも、デビュー当時の中邑選手って応援しづらくなかったですか? 言ってることも難しいし、棚橋弘至選手【7】みたいにキャラがわかりやすくないし。

キョコリーナ 棚橋は応援しなくても「デキる子」じゃないですか。でも中邑は応援しないと……って。

めんま 「応援しないと」っていうの、わかります。私、今年のG1前に飯伏選手が脳震盪を起こした時はすごく心配で。プロレスラーの人って大抵「絶対勝ちます」みたいに強気なことしか言わないけど、飯伏選手は結構弱音も言うんです。「どうですか、飯伏さん」「今日はムリっすね!」とか。

三田 同僚の石川修司選手(現ユニオンプロレス所属)が彼を評した秀逸な言葉があるんですけど、それが「見た目がかっこよくて、運動神経も抜群、プロレスのセンスもあって、しかも馬鹿!」。これが愛される要素なんです。これで性格までイケメン風だったら嫌味になっちゃうけど、そうじゃないから人気があるんだと思う。飯伏選手は女性のファンも多いけど、皆さんどちらかというと「付き合いたい」とかじゃなくて「お母さんの気持ち」なんですよね。

めんま そうなんです、「あんな無茶して……」という気持ちになる。

三田 だから8月の復帰戦も、無理するんじゃないかなって、心配でドキドキして観てましたよね。試合でムチャクチャなことをやってほしいけど、「いつまで私たちは飯伏を見続けていられるのかな」と、みんな頭の片隅で思ってる。飯伏選手の場合、ある日突然フッといなくなりそうで……。

めんま ちょっと儚い感じがありますよね。

キョコリーナ 今年のG1西武ドーム【8】で、棚橋がギターでボコボコにやられた【9】じゃないですか。友達の女の子が「やられてるところにキュンとした」と言っていました。やっぱり、やられてるところがイイっていう女子は多いですね。

めんま 私もやられまくってる飯伏選手が超好きで、携帯に「やられ飯伏」ってフォルダを作ってます(笑)。あと、デスマッチで流血するとかっこいい選手もいるかと。

松本真紀子 デスマッチは、苦手な人とハマる人と両極端ですよね。

三田 女性は、行ってみたら超燃えるって人も多いですね。「キャー!」って言いながら、指の間からチラチラ観るような(笑)。

松本真紀子 生観戦で何を観るかというところで言うと、プロレスは肉体の美しさを観る楽しみがありますよね。例えば中邑選手は、入場の時に身体を反らせるじゃないですか。その前にロープに足をかける柔軟が素敵で、一番自分がかっこよく見えるポーズを研究してるんだろうなって。しかもそれを毎回出し惜しみせずやってくれる。最初はクネクネしていてキモいと思ってたんですが、いつの間にか目が離せなくなりました(笑)

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