【石井光太】「危険地帯なんてどこにもなかった 日本での一般常識を覆す本」

石井光太(作家)
1977年、東京生まれ。国内外の文化・歴史・医療などをテーマに執筆。主な著書に、アジア諸国の障害者や物乞いを追った『物乞う仏陀』(文春文庫)など。東日本大震災後の遺体安置所を舞台にした『遺体―震災、津波の果てに』(新潮社)は映画化され、ヒットを記録した。

『世界「比較貧困学」入門』 
出版社/PHP新書 価格/780円+税
世界の最底辺を取材し続けてきた著者が、その経験をもとに、世界で巻き起こる貧困について比較・解説する。あやふやな「貧困」の本質に迫る一冊。
【A】プーラン・デヴィの自伝『女盗賊プーラン』(上)
プーラン・デヴィ(著) 武者圭子(訳)/草思社(1997年)/1600円+税
インドの極貧の村に低カーストとして生まれ、虐待、白昼のレイプなどを受けた少女プーラン。ある日彼女は、盗賊団に誘拐され、そのまま族長にまで上りつめる。1996年に文盲の国会議員として当選した著者本人が綴った壮絶人生記。

 僕が初めて海外を旅した場所は、アフガニスタンとパキスタンでした。ストリートチルドレンに宗教論で言い負かされたり、物乞いに「1ルピーくれ」と言われてどうしていいかわからなかったり。外国人が日本人という概念を通して抱く虚像と、本当の自分、僕が抱いていた世界のイメージと、現実の世界の4つがまったく違うことに気づかされました。

 そういえば、パキスタンに行く前に、『地球の歩き方・パキスタン編』(ダイヤモンド社)を買ったけど、あんまり役に立たず(笑)。現実と本はまったく違ったんです。

 そもそも、本とは答えを学ぶものではなく、世界はすべて違うという前提を学ぶものだと思います。その前提の中で、旅は「あそこは楽しい」「あそこは危険だ」など、その土地に対する固定観念を覆していく作業といいましょうか。だから、もし一般的に危険地帯と呼ばれている場所を旅するのであれば、その土地に対するイメージを覆してくれる、個人の体験を綴った本をすすめたい。

 例えば、辺見庸さんの『もの食う人びと』【1】、松本仁一さんの『アフリカを食べる/アフリカで寝る』【2】、開高健さんの『オーパ!』【3】などは面白い。ノンフィクションであると同時に、文学的にも非常に読みごたえがある。僕は高校時代に『もの食う人びと』を読んだのですが「こういう文学的なノンフィクションもあるんだな」と影響を受けました。

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