ASKAから田原俊彦、吉田拓郎まで――マスコミ記者による“芸能人住居”直撃の悲喜交交

――数々の芸能スクープをモノにしてきた芸能評論家・二田一比古が、芸能ゴシップの"今昔物語"を語り尽くす!

ASKA『僕にできること』

 芸能人が事件を起こすと決まって明るみになるのが住まい。日頃は自主規制が当たり前の芸能マスコミも事件となれば別。容赦なく自宅を直撃する。覚醒剤で逮捕されたASKA被告の場合も、目黒の豪邸が散々テレビで紹介されたことによって逮捕の衝撃とともに豪邸の凄さまで見せつけられた。

「やっぱり芸能人は立派な家に住んでいるわねえー。土地、建物合わせていくらぐらいかしら」と、視聴者から余計なことまで詮索される。

 変わったところでは最近、再ブレイク中だと話題の田原俊彦の豪邸が売りに出されていると写真誌に掲載された。家と車は芸能人のステータスと昔から言われ、出世に比例するように家もグレードアップしていく。トップスターとして安定すると行きつく先は別荘。それも軽井沢など国内だけでなくハワイなどに別荘を持つようになる。最近はオーストラリアに持つ人もいる。ここまでいけば"芸能人"として完成の域に入る。

 持ち家は庶民の憧れの的であるが、マスコミにとっては豪邸の凄さよりも、芸能人がどこに住んでいるかが大切になってくる。事件だけでなくスキャンダルなどでも誰がどこに住んでいるかは欠かせない情報。結婚している芸能人に別居などの噂がたった場合には、いの一番に行くのが家。近所の聞き込みや、家に残された奥さんへの取材に家に行くことになる。

 苦い経験がある。吉田拓郎の最初の離婚の時だった。「すでに別居している」との確実な情報を元に残された家にいる奥さんを直撃という算段だった。昼に下見。昼間の豪邸は声が外に漏れてこないと、在宅しているのか判別が難しいが、夜は電気が灯ることによって在宅が確認できる。

 8時過ぎ、灯りを確認して玄関のチャイムを押した。当時はインターホン等なく、呼び鈴を押し中から住人が応対する。呼び鈴を押すと、「ハイ」と中から野太い男の声がした。

てっきり奥さんも別の男を連れ込んでいると思った。「これは面白い展開」と思ったのも束の間、ドアから出てきたのは吉田拓郎本人だった。別居は妻のほうが出て行ったものだったのだが、そんなことは露知らず。とっさに「奥さんいらっしゃいますか」と訪ねていた。夜に奥さんを訪ねて来る輩と思ったのだろう、多少、お酒が入っていたこともあってか吉田は怒り心頭。家の中で延々と説教を受けるハメになった。

 インターホンがない時代の取材は、さまざまなアクシデントが起こる。ある女性歌手の結婚話が発覚した。となるとその親の証言が必要となる――。幸い、都内に実家があった。芸能人の実家ははっきりと住所を知らなくとも、どの界隈とわかれば、聞き込みで判明することが多い。有名人の家はやがて近所の評判になり、いつしか近所の名所のようになってしまうからだ。

 週末の昼下がり。歌手の実家を訪ねると父親が庭の手入れをしていた。これ幸いと、塀越しに声をかけると、「話すことはない。帰れ」と一喝された。しつこく取材をかける。すると突然、庭の水撒き用のホースで顔をめがけて放水されてしまった。全身びしょ濡れだが、同じ取材拒否でも成果あり。放水が取材に対する答えと、その様子をそのまま記事にした。業界では「その家に行く時は父親の放水に気を付けろ」が合言葉になっていた。

 現在はインターホンで取材拒否と簡単に切られてしまうか、「家の人は出かけています。私は留守を頼まれている者です」と断られる。明らかに本人の声なのに姿が見えなければ本人とは断定できない。結局、居留守を使われてしまうケースも多かった。

 インターホン全盛時代では取材もドラマがなくなったと痛感する。昔はあってチャイム。ないところは玄関を直接ノックだった。断るにしても訪問者の確認もあって、玄関を開けなければならなかった。訪問セールスマンが多かったのもわかる。この仕事を始めた頃、取材の"いろは"として教えられたのが、玄関を必ず開けさせ、開けたら半身を中に入れて閉められないようにすること。

 ドア越しでは断られるにしても相手の顔、服装、表情が見えない。開けさせ食い下がることによりある程度、相手や家の様子がわかる。独身男性の一人暮らしのはずなのに、下駄箱の脇に女性の靴を発見するということもある。

 近年の豪邸は玄関どころか、外の門止まり。中の様子を見ることも叶わぬ時代。子供がいない芸能人になると、一軒家よりもセキュリティーのいい億ションに住んでるケースもある。マンションの玄関にも辿りつけないで「あそこのマンションは取材できない」と行く前にお手上げ。駐車場も地下にあったりして、在宅の確認すらできない。それでも、ASKA被告のようにいつどんなスキャンダルや事件を起こすかわからない。芸能人の住まいは常に大切な情報の一つであることに変わりはない。

ふただ・かずひこ
芸能ジャーナリスト。テレビなどでコメンテーターとして活躍するかたわら、安室奈美恵の母顔が娘・奈美恵の生い立ちを綴った「約束」(扶桑社刊)、赤塚不二夫氏の単行本の出版プロデュースなども手がける。青山学院大学法学部卒業後、男性週刊誌を経て、女性誌「微笑」(祥伝社/廃刊)、写真誌「Emma」(文藝春秋/廃刊)の専属スタッフを経て、フリーとして独立。週刊誌やスポーツ新聞などで幅広く活躍する。現在は『おはようコールABC』(朝日放送)、『今日感テレビ』(RKB毎日放送)などにコメンテーターとして出演。

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